アメリカは労働者不足? いや、実は雇用者不足
経済学の理論上、雇用者が選ぶのは後者――つまり低賃金を続けて従業員を増やさないほうだ。オバマ前米政権の経済諮問委員会が16年に説明したように「買い手独占状態の企業は、賃金を低水準に抑え続ける人件費削減のメリットが、生産量と収益を下げるデメリットを補って余りある」と考えるためだ。
例えば、あなたが小さな建設会社の社長だとする。従業員の賃金を低く抑えているが、地元に競合する会社が少ないために今までは問題なかった。
あるとき大工を募集することにした。だが高い賃金を提示すれば、他の従業員が不満を抱いて辞めてしまうかもしれない。
そこで、それほど高くない時給で求人を出したところ、応募はゼロだった。これは人材不足のせいだと思えるかもしれない。だが本当の問題は、相応の賃金を提示しない社長のあなたのほうにある。
今度、求人が埋まらない問題で労働者の技能不足を嘆く話を耳にしたら、本当の問題は雇用者のほうが足りないことではないかと考えてみてほしい。
<本誌2018年1月30日号掲載>
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