最新記事

オリンピック

平昌五輪へ北朝鮮スキー場での南北合宿案、経済制裁に抵触の可能性

2018年1月24日(水)09時48分

韓国統一省は、スキー場への選手派遣について、まだ決定していないとしている。

「北朝鮮選手団に経済的支援を提供することで、制裁効果を薄めてしまうとの見方があることは承知している」と、同省広報官は19日の記者会見で述べた。「(北朝鮮に対し)制裁と圧力を与える国際協力を継続する立場に変わりはない。国際社会や国連の専門家委員会と協議して、問題がないようにする」

北朝鮮に対する制裁履行を監視する国連専門家委員会は、昨年の報告書で、オーストリア企業製ケーブルカーが、馬息嶺スキー場で使用されていたことを受け、規制対象にリフト設備を追加したと述べている。

ソウルにある峨山政策研究所のジェームス・キム研究員は、制裁決議に抵触する懸念を払拭するには、韓国政府は「極めて良く練られた計画」が必要だと話す。

「文政権の目標は、緊張を緩和し、北朝鮮の核問題の平和的解決に向けた発射台として冬季五輪を利用することだ。だがその実現に向けた韓国政府のやり方について、検討するべきだという批判は正しいと思う」と、キム氏は話した。

スキー場を訪れた在平壌英国大使館職員は昨年、スキー場の美観を保つための雪かき作業などに子どもが動員されていたと話し、「非常に懸念を覚える」と述べていた。

「北朝鮮における大小のインフラ事業に対して、常習的に強制労働が行われていることは良く知られている。学生に課される義務的労働も含まれており、子どもも働かされている」。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチでアジアを担当するフィル・ロバートソン氏はそう語る。「馬息嶺スキー場が例外だと考える理由はない」

韓国と北朝鮮は、北朝鮮の金剛山で行われる文化イベントのほか、両国でのコンサート、韓国でのテコンドー実演など数々の五輪関連の合同プログラムを計画しており、五輪自体が目立たなくなってしまうリスクもあると、前出のKim氏は言う。

「五輪自体は、非政治的なスポーツイベントだ。だが周辺のイベントが大きくなり過ぎると、純粋な五輪の存在意義が政治化され、汚されてしまう恐れがある」とKim氏。「いったん一歩引いて、肩の力を抜いた方がいい」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)



Hyonhee Shin

[ソウル 22日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

TikTokのCEO、米情勢巡りマスク氏に助言求め

ワールド

ウクライナ戦争志願兵の借金免除、プーチン大統領が法

ワールド

NATO事務総長がトランプ氏と会談、安全保障問題を

ビジネス

FRBが5月に金融政策枠組み見直し インフレ目標は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中