最新記事

アメリカ大統領

中国はトランプ大統領就任1周年を、どう見ているか?

2018年1月22日(月)08時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

そこにさらに17日夜、米海軍のミサイル駆逐艦ホッパーが、中国が自国領と主張している南シナ海のスカボロー礁海域に進入したのだ。 これに関しては別途考察するが、中国の対米感情は、ここに来て、一気に悪化している。

中国、勝利感――国際社会におけるアメリカ指導者への支持率が中国を下回る

アメリカのギャラップ社が134の国と地域を対象に調査したところによれば、アメリカの指導者に対する世界の支持率は30%と、中国の31%を、わずかながらではあるものの下回った。たとえ1%の差であっても、習近平国家主席にとっては、嬉しくてならないだろう。CCTVもネット情報も、「遂にアメリカを凌駕する日が来た」と言わんばかりの論調が目立つ。まるで勝利感に浸っているような勢いさえ感じる。

アメリカ議会においても、上院も下院も議員数では共和党が民主党より多いのに、「その自分が属する多数党においてさえ、指導力を発揮できなかったことになるのだ」と、優越感丸出しだ。対比させるかのように9000万人近い中国共産党員の頂点に立つ習近平の権力の強さをアピールし、全党を掌握していることを強調した。

しかし、一党支配体制国家と比べてもらっては困る。

おまけに中国共産党は日中戦争時代に毛沢東が日本軍と共謀して強大化した党だ。その事実を覆い隠し激しい言論統制を行なっているのだから、中国は国家として嘘をついているのである。国民と全世界を騙しながら成長してきた国だ。

国内における国家主席の支持率も、統計など取ってはならない。

さて、そんな独裁国家と民主主義国家のゆくえ――。

そして、その象徴である習近平とトランプ――。

まさに「どちらが世界を制するのか」、世界はその動向を注視している。

米中の仲が悪くなれば中国は日本に秋波を送ってくる可能性もなくはない。日本にとっても他人事ではない。身を引き締めて大局を見失いようにしたいものである。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中