最新記事

異常気象

猛暑で脳が沸騰、コウモリの子供が大量死

2018年1月10日(水)17時45分
ソフィア・ロット・ペルシオ

地面に落ちて死んだコウモリの子供を並べて数えたら200匹に達した HELP SAVE THE WILDLIFE AND BUSHLANDS IN CAMPBELLTOWN/FACEBOOK

<週末に記録的な暑さになったオーストラリアで、大コウモリの子供数百匹が命落とす>

オーストラリアの野生動物たちは、ここ数日オーストラリアを襲っている猛暑を乗り切ろうと苦闘している。

1月上旬、ニューサウスウェールズ州キャンベルタウンでは、オーストラリアに生息する最大のコウモリであるオオコウモリの子数百匹が、保護活動家たちの懸命の努力もむなしく命を落とした。この週末の気温は摂氏40度を超え、記録的な暑さだった。

「キャンベルタウンの野生動物と森林を守る会」のフェイスブックページの投稿には、シドニー西郊の野生保護区でボランティアたちが直面した苛酷な光景が綴られている。この地域では、7日の気温が47.3度に達し、1939年以降の最高気温を記録した。

記事にはこう書かれている。「死骸を回収して並べ、その数を確認したところ、200匹に達していた。ほかにも樹上には、手が届かない数百匹の死骸がある。成体も何匹か含まれていた。胸の痛む、長い午後だった」

オオコウモリは、オーストラリアでは絶滅のおそれがある「危急種」に指定され、その命を守ることが最優先事項になっている。今回の大量死の原因は、高い気温がコウモリの脳機能に影響を与えたことだと考えられている。キャンベルタウンに生息するオオコウモリ群を管理するケイト・ライアンは、地元メディアの「カムデン・アドバタイザー」に対して、「簡単に言えば、脳が沸騰する」と説明している。「脳が過熱し、正常に機能しなくなって死ぬ」

手を触れずに救う法

ニューサウスウェールズの野生動物保護団体「WIRES)」は、病気の感染を防ぐため、木から落ちたコウモリに触れたり、昼間木の根元に近づいたりしないよう呼びかけた。オオコウモリを見つけたらボランティアを呼び、地面にいるコウモリに傘を差しかけたり、細かい霧を吹きかけたりすることを推奨する。

ボランティアスタッフはワクチンを接種しているため、コウモリに触れても問題ない。回収後は、コウモリに皮下注射で輸液し、脱水症状を治療する。

WIRESによれば、今回の熱波で数千匹のコウモリが死んだ可能性があるが、ボランティアの努力により、100匹を超えるコウモリが一命をとりとめたという。

WIRESは、1月9日のフェイスブック記事でこう述べている。「キャンベルタウンのオオコウモリ群では、この週末に20匹以上のコウモリの子が保護された。いずれも、集中的かつ継続的な治療が必要だった。パラマタ・パークに生息する集団のコウモリ20匹も治療を受けている。結果、120匹以上を治療し、母親の元へ返すことができた」

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

サムスン、第1四半期のAI半導体低迷を警告 米の対

ワールド

ガザ検問所に米退役軍人配置へ、イスラエル・アラブ諸

ワールド

米レーガン空港、ヘリとのニアミス事案頻発 80年代

ビジネス

コマツ、今吉専務が社長就任へ 小川社長は会長に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中