セクハラ告発急増 和解時に公表を禁じる「秘密保持契約」の是非
秘密保持契約を批判する人々は、それによって、常習的なハラスメント加害者が、彼らの行為を部下や同僚に対して秘密にしておけるようになる、と主張する。ニューヨーク、カリフォルニア、ペンシルベニア、ニュージャージー各州の州議会議員は、セクシャルハラスメントやその他の雇用関連事件において、秘密保持契約を禁止することを提案している。
公表されるハラスメント告発が増えるにつれて、こうした提案が勢いを増す可能性がある。これまでのところ、ソーシャルメディアでは「Me Too(私も)」というハッシュタグをつけて、ハラスメントの告発を投稿した人は数百万人にも及んでいる。
過去のNDAは、必ずしも女性たちが表に出ることの歯止めにはなっていない。ハリウッドの映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏のアシスタントだったゼルダ・パーキンス氏は、そのような合意に違反して、元上司のハラスメントを告発したと話している。
ワインスタイン氏は不同意のセックスに関する告発をすべて否定している。ロイターはこれらの主張について確認していない。
訴訟へのためらい
秘密保持契約に違反した女性たちは、潜在的には、合意違反によって告訴される可能性がある。だが双方の弁護士は、昨今のような雰囲気では、企業や性的不品行を告発された人物は、暴行やハラスメントの被害者を告訴することを躊躇するだろうと指摘する。
仮に告訴するとしても、勝てる保証はない。一方の当事者に対してアンフェアである、あるいは公序良俗に反していると判断する場合、裁判官は裁量により契約を無効とすることができる。今年に入ってから、ワシントンDCの連邦控訴裁判所は、病院職員が賃金その他の労働条件について議論することを禁じる雇用契約を無効とする判断を示している。
すでに一部の州には、製品の欠陥や環境汚染など「公衆に対する危険」を隠蔽(いんぺい)するような秘密保持契約を制限する法律がある。
性的不品行の告発を隠蔽するような秘密保持契約を無効とするためにも、これと同じ理屈が用いられる可能性がある、と弁護士らは言う。ハラスメント加害者の行為が公表されないと、一部の加害者が他の人にも危険を及ぼす可能性がある、という理論だ。
複数のハラスメント事件で原告側弁護士を務めた経験のあるインディアナ大学のジェニファー・ドロバック教授(法学)は、裁判所は、特に性的暴行またはその他の犯罪行為の告発を隠蔽するような合意には疑いの目を注ぐだろうとの見方を示した。
複数の弁護士によれば、結果的に、今後は恐らく秘密保持契約が用いられることが減り、現在よりも制約の少ないものになる可能性がある、という。
フォーリー・アンド・ラードナー法律事務所に所属するダブニー・ウエア弁護士は、ハラスメント訴訟において雇用者側の弁護を担当しているが、今後の秘密保持契約は、当事者の名前と支払われた和解金の金額だけを秘密とし、告発を公表することは認めるものになるのではないか、と話す。