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セクハラ告発急増 和解時に公表を禁じる「秘密保持契約」の是非

2018年1月5日(金)10時24分

企業に対して性的不品行の告発を真剣に受け止めることを示すよう求める社会・投資家の圧力があるため、どれほど要職にあろうと、そうした不品行の告発を受けた社員を守ろうとする企業の意欲は大幅に落ちていると弁護士は指摘する。

フォックス・ニュースによる差別的行為を告発する訴訟において20数名の原告代理人を務めているウィグダー弁護士の指摘によれば、同ネットワークの親会社である21世紀フォックスは、元司会者のビル・オライリー氏、フォックス・ニュースの創業者で初代最高経営責任者(CEO)であるロジャー・エイルズ氏に代わって和解金を支払ったことを巡る株主代表訴訟において、9000万ドル(約100億円)の和解金を支払ったという。

秘密保持の徹底を狙った一部の強硬戦術も消えていくかもしれないと弁護士はみている。以前であれば、依頼者は和解の時点で、証拠の引き渡し、または破棄、あるいは被告の犯罪を免責する宣誓供述書への署名を求められた。また和解金が分割払いとなる例もあり、和解金の支払いを留保するという脅迫で告発側を縛ることもできた。

現在ではそうした条件は裁判所に見とがめられ、和解そのものが無効とされてしまう可能性が高いと、こうした事件における双方の側の弁護士たちは語る。

だが前出のウエア弁護士は、あまり悪質でない事件や、ハラスメントの調査で明確な結論が出ない場合には、引き続き秘密保持契約が用いられる可能性が高いと言う。

原告側の弁護士によれば、告発者の多くはひっそりと訴えることを希望しており、話題になる可能性があると、そもそも訴えることを尻込みする可能性があるという。

「今後も、事情を秘密にしておくことが適切と思われるケースがあるだろう。しかしそれは、大幅に制限されるようになる」とウエア弁護士は語った。

(翻訳:エァクレーレン)

Daniel Wiessner

[ロイター]


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