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日中関係

習近平の深謀が日中和解のサインに潜む

2017年12月29日(金)08時30分
ミンシン・ペイ(クレアモント・マッケンナ大学ケック国際戦略研究所所長)

中国に対する封じ込め政策は日本が参加を拒めば骨抜きになるだろう。中国にとってはアメリカを出し抜いて日本に働き掛けるのが一番だ。日中関係を改善できれば、日本はアメリカと共に中国を封じ込めることに消極的になるはずだ。

以上が安倍に対して習が態度を軟化させている理由だとすれば、目的達成を阻む「壁」も待ち受けている。

最も明白な壁は、習が日本に歩み寄りを見せているのは単に戦術的なもの、と見破られる可能性だ。言い換えれば、中国の対日政策は根本的には変わっていない。

中国が東アジアの覇権国家を自任し、日本を対等なパートナーと認めなければ、日本は今後も中国の長期的な狙いについて懸念するはずだ。中国の経済・政治改革の後退を思えば、中国をアジアにおけるパートナーとして信頼することに日本がさらに懸念を深めるのも当然。こうした懸念から、日本はこの先も安全保障をもたらすことのできる唯一の同盟国アメリカから離れないだろう。

さらに、日本との関係改善を模索するのなら、中国は近年の強硬路線からの劇的な転換を示すため、はるかに多くのシグナルを送らなければならない。例えば、中国の国営メディアは反日プロパガンダのほとんどをやめて、中国軍は日本付近の海域や空域での活動を大幅に削減するはずだ。しかし日本のADIZに中国の軍用機が侵入した事件などを見る限りでは、新たな対日融和政策を、軍をはじめ中国の主要組織がそろって支持しているのかどうかは疑問だ。

最後の壁はアメリカだ。トランプと国家安全保障顧問たちが習の動きを注視するだろう。アメリカは日中の緊張緩和は歓迎しても、中国が日米関係に亀裂を生じさせようとすれば黙ってはいない。朝鮮半島の核危機やアメリカのアジア戦略といった非常に重要な問題について、アメリカは日本が今後もアメリカの忠実で頼れる同盟国であり続けるよう、あらゆる手を尽くすはずだ。

こういった理由から、中国が見せた日本に対する雪解けムードは、当面はうわべだけで中身のないものになる公算が大きい。引き続き和解を目指すのなら、習はさらに多くの、より強力なシグナルを送るはずだ。近い将来、高官レベルの協議が再開され、ひいては習と安倍の公式首脳会談も実現するかもしれない。

そうしたジェスチャーは追い風にはなるが、日中関係の本質と根本にある戦略的力学を変えるものではない。アジアにおけるライバルである2つの国は、以前よりはましな関係になっても、決して警戒を解くことはできないはずだ。

本誌2018年1月9日号〔年始合併号〕掲載


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