最新記事

ヘルス

「うんちカプセル」のすご過ぎる効果

2017年12月25日(月)12時15分
ケイト・シェリダン

恐い感染症を「便カプセル」で手軽に治療 Baluchis/iStock.

<弱った腸に健康な人の便を移植して耐性菌をストップ――画期的な治療法が経口カプセルでもっと手軽に>

抗生物質が効きにくいクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)は下痢や吐き気を引き起こし、死に至ることもある腸の病気。その治療に絶大な効果があるとして近年、他人の便を腸に移植する治療法が大きな注目を集めている。

CDIの原因菌であるクロストリジウム・ディフィシル菌に感染するのは、多くの種類の細菌に効果がある抗生物質を使った結果、有害でない腸内細菌までいなくなってしまうせいだ。米疾病対策センター(CDC)によれば、アメリカでは年間50万人が感染、1万5000人が死亡する。「院内感染による下痢の最大の原因」だと、アルバータ大学(カナダ)のディナ・カオ准教授は言う。

だったら腸が健康な人の便を移植して腸内環境を整えよう、というのが便移植療法だ。ぞっとするかもしれないが、大きな効果が期待されている。

13年に実施された比較臨床試験では、便移植療法を受けた患者は予想を大きく上回る回復ぶりを示した。カオらの研究でも治癒率は約90%。「すご過ぎる。薬ではここまで効かない」と、カオは言う。

もちろん、他人の便をそのまま移植するとなると抵抗を感じるのが当然だ。その点、必要な細菌だけを集めた経口カプセルなら不快感が多少は和らぐのではないか。

そう考えたカオらは、成人のCDI患者116人を対象に経口カプセルの有効性を検証。内視鏡による便移植と効果が変わらないことを突き止め、11月28日付の米国医師会報で発表した。

カオらの研究はこの療法に向いている患者ばかりを選んだ可能性はあるものの、総じて信頼できると、自身も便移植療法を研究しているマサチューセッツ総合病院のエリザベス・ホーマンは指摘する。「今回の結果は最善の場合のシナリオ」だが、「経口カプセルの有効性を検証し、内視鏡を使わずに高い治癒率を実現できると示した点は評価できる」。内視鏡や麻酔を使うと患者の体への負担が重くなるという意味でも、この結果は大きな意味を持つ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中