孤独なオタクをのみ込む極右旋風
それでも、ファーリーのイベントから仲間が締め出されるのは意外でないと言う。「社会正義を振りかざす連中が取り仕切っていることが多いから」
もっとも、オルト・ファーリーと白人至上主義者、そしてシャーロッツビルの事件の間には現実につながりがある。
ディオが暴露したディスコードのチャット記録によれば、ダイアニシャスは前述の作品を、シャーロッツビルにおけるオルト・ライトの有名な指導者、クリストファー・キャントウェルに送っている。彼のYouTube番組で取り上げてもらおうとしたのだ。
白人至上主義者とオルト・ファーリーのつながりを体現する人物と言えば、若いオルト・ライトでネオナチのネーサン・ゲイトだろう。
彼は自分のことをファーリーだとは思っていないが、ディスコード上のオルト・ファーリーのグループ立ち上げに参加。カリフォルニア州でのファーリー・イベントへの反対運動を展開したりしている。
シャーロッツビルでのデモでは2時間半に及ぶネット中継を行ったが、ゲイトの周囲には白いポロシャツを着たネオナチや武装した民兵、著名な白人至上主義者のデービッド・デュークらがいた。
狙われる「孤独な人々」
ゲイトの18歳の恋人、KKキューティーはネオナチに取り込まれたファーリーの好例だ。数カ月前まで普通のファーリーだった彼女はディスコードで非常に過激な投稿を繰り返しており、ディオを殺すために殺し屋を雇うと提案したのも彼女だ。
「多くのファーリーに、オルト・ファーリーはある種の脱出をもたらす」とKKキューティーは語っている。「右傾化が進めば身も心も成熟を始め、ファーリーから卒業し、本物の政治活動に身を投じることになる。私もそうだし、友人たちも同じ道をたどってきた」
彼女はオルト・ライトの影響で過激な白人至上主義者になったと述べている。だがチャット記録からは、ファーリー向けの作品制作で金を稼ぐ話をする一方で、彼女のファーリーに対する蔑視が膨らんでいくさまが見て取れる。「私がファーリーのポルノを描けば、連中はお金をくれる。そして財布が空っぽになって飢えて、サヨクも変態も死んでいく」
こうした発言はオルト・ライトに対する自分の見方の正しさを裏付けているとディオは言う。「彼ら(白人至上主義者)はオタク集団を利用する。苦々しく悲しい思いを抱えた孤独な人々がたくさんいる『草刈り場』だからだ」
冒頭のジュニアスが配った反ファシズムのステッカーはすぐに品切れになった。シャーロッツビルの被害者支援基金への寄付も集まった。入場を禁止されたオルト・ファーリーたちと比べ、はるかに支持を集めている印象だ。
それでもオルト・ファーリーをめぐる議論や対立は今も渦巻いている。もふもふの毛皮もぎすぎすした空気を和らげるには役立っていないようだ。
[2017年12月12日号掲載]