最新記事

北朝鮮

中国軍駐留で北朝鮮の非核化を

2017年12月7日(木)15時45分
オルトン・フライ(米外交問題評議会名誉研究員)

別のアプローチを探る時期に来ているのではないか。米韓関係のように、中国が北朝鮮に軍隊の駐留という形で「再保証」を与えてはどうか。

中国は北朝鮮への懸念を強めており、61年の中朝友好協力相互援助条約について、北朝鮮が攻撃されたら助けに行くが先制攻撃をした場合は助けないとの解釈変更を行った。建設的な姿勢だが、北朝鮮が「中国は当てにできない」と考え、ますます核の抑止力に頼る可能性もある。

金正恩は若いので、半世紀以上前の朝鮮戦争で中国が多大な犠牲を払ったことを知らないかもしれない。あの時は300万人近い中国兵が戦い、約38万人が負傷、18万人以上が死亡した。この数は、北朝鮮自身の死傷者数に迫るものだ。

つまり中国は、文字どおり命懸けで北朝鮮を守ってきた。この歴史的事実に加えて、現段階で北朝鮮に自国の軍隊を駐留させれば、北朝鮮防衛の姿勢は一段と鮮明になる。こうした「再保証」には、在韓米軍(約3万人)と同規模の中国軍を常駐させる程度でいい。

それでは中国に軍事力の拡大をけしかけるようなもので、アメリカの国益に反すると考える人もいるだろう。人権無視の国に肩入れすれば、いずれ痛い目を見るぞ、と。しかしこれこそが迫りくる戦争の危機を回避する賢明な方法と思われる。

米韓両国はもともと、北朝鮮との戦争になれば中国が参戦することを想定している。多少の中国人兵士が常駐するくらいで軍事力のバランスが変わるものでもない。もとより米韓両国に北朝鮮へ進軍する意図はない。

しかしこの「再保証」によって、戦争が起きても中国が助けてくれないという北朝鮮側の恐怖を取り除ける。中国軍のいる場所をアメリカが攻撃することはあり得ず、従って自衛のための核・ミサイル開発だという北朝鮮側の主張の根拠が崩れる。

同時に経済制裁と政治的孤立を緩和してやれば、金正恩にミサイル発射実験を思いとどまらせる上で最大限の効果を上げるのではないだろうか。

説得できるかは中国次第

中国はこの戦略に賛同するだろうか? 今のところ、中国には北朝鮮に兵を送るつもりはない。朝鮮戦争では大規模に介入したが、その後は撤退した。ソ連が何十年にもわたって東ヨーロッパで軍隊を常駐させながら、多くの衛星国を支配してきたのとは好対照だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、会長とCEOが辞任 24年は450億元の

ワールド

米ロ首脳会談の設定、米からまだ連絡ない=ロシア大統

ビジネス

フジ・メディアHD、嘉納会長が引責辞任 フジテレビ

ビジネス

タイ経済、今年3.0─3.5%成長へ 刺激策と外国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 2
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」で記録された「生々しい攻防」の様子をウクライナ特殊作戦軍が公開
  • 3
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが物議...事後の悲しい姿に、「一種の自傷行為」の声
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「1日101人とただで行為」動画で大騒動の女性、アメ…
  • 6
    「ハイヒールを履いた独裁者」メーガン妃による新た…
  • 7
    ネコも食べない食害魚は「おいしく」人間が食べる...…
  • 8
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 9
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 10
    カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 4
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 5
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 6
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 7
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 8
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 9
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 10
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中