最新記事

中国

北ミサイル、中国の本音は?――中国政府関係者独自取材

2017年12月4日(月)15時38分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

さらに報道官は「軍事手段は問題解決の選択肢にない」と述べて、対話の重要性を強調し、ここでもまた圧力強化を訴える日米を牽制した。

ヘイリー米国連大使の発言に対して

アメリカのヘイリー国連大使は29日、国連安全保障理事会の緊急会合で、「全ての国」に北朝鮮との外交や通商関係における関係を断絶するよう呼びかけた。

これに対して中国の国連代表は「深刻な現状を考慮し、すべての関係国が安保理決議を厳格に実施し、早期の交渉開始に向け最大限の努力をすべきだ」と述べ、ロシアの国連大使も「一触即発の状態に火をつける」とし、12月に予定されている米韓軍事演習を停止するよう求めた。

さらにロシアのラブロフ外相は30日、訪問先のベラルーシでヘイリーの提案を拒否する考えを明らかにした。ラブロフは「対北朝鮮制裁は既に尽くされており、対話を再開する必要がある。アメリカが軍事演習などを通じて北朝鮮を挑発している」とした上で、「もしアメリカが、北朝鮮を破壊する口実を探したいのなら、はっきりと言うべきだ」と非難した。

それに続けて中国外交部の報道官も、ラブロフと同じく、北朝鮮との関係断絶を拒否しただけでなく、北朝鮮を国連から追い出すことも適切ではないと述べている。

中露は今年7月5日、中露共同コミュニケを出しており、あくまでも「双暫停」を主張している。何度も繰り返すが、「双暫停」とは「米朝双方が軍事行動を暫定的に停止して対話のテーブルに着く」という意味だ。「北朝鮮は核・ミサイル開発を停止すると同時に米韓も合同軍事演習を停止すること」を指す。

中国政府関係者を独自取材

これまで何度もコラムで書いてきたが、中国は北朝鮮の暴走を食い止めることができる独自の3枚のカードを持っている。

 1.中朝軍事同盟の破棄

 2.原油のパイプラインを遮断する全面的な断油

 3.中朝国境の完全封鎖

の3つだ。

トランプの言う通り、今こそまさに、そのカードを使うべき時ではないのか。中国はどういうつもりでいるのか。習近平の発言や外交部報道官の回答だけでは図り知ることができない詳細に関して、中国政府関係者を独自取材した。

以下、「Q」は筆者の質問、「A」は中国政府関係者の回答で、( )内は、筆者の説明や解釈である。

Q:核・ミサイル開発を中止しなければ、中朝軍事同盟を破棄するという威嚇は、北朝鮮に対して既に行っているのか?

A:あんなものは既に存在しないに等しい。北朝鮮もきっと、そう思っているだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソフトバンクG、オープンAIに追加出資 最大5.9

ワールド

ブラジル前大統領、ルペン氏公職追放を「左派的司法活

ワールド

中国軍、台湾周辺で陸海軍・ロケット部隊の合同演習

ビジネス

テスラ第1四半期納車台数は前年比マイナスか、競争激
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中