最新記事

米軍事

米核戦略にICBMは必要? 過去の失敗事例から専門家は疑問の声

2017年12月5日(火)18時13分


北朝鮮の脅威

トランプ大統領には核戦力を扱うスキルが欠けているとの懸念は的外れだ、と国家安全保障会議の広報担当者は語る。「大統領は、核戦力の運用を巡るあらゆる判断を下すため、卓越した準備を行っている」

もっとも、ICBMを巡る疑問が生じたのは、政権交代する以前からだ。

懐疑派は、北朝鮮のような脅威に対する抑止力としてICBMは、ほぼ無意味だと断言する。地上配備型ミサイルの目標となる仮想敵国はただ1つ、ロシアだけだというのだ。

北朝鮮や中国、イランなどの敵対国に対して北米大陸からICBMが到達するにはロシア上空を通過する必要があり、ロシア政府による意図的、あるいは偶発的な報復核攻撃を招くリスクが存在するからだ。とはいえ、少数のICBMは中国を狙っている。ロシア、中国両国に対して戦争状態となる場合に備えるものだ。

批判は高まっているものの、今のところ米国がICBM戦力を捨てる可能性はほとんどない。ICBM肯定派にとっては、「三本柱」のこの部分を捨てることは、3本脚の椅子の1本を切り取るに等しい。

オバマ前大統領もトランプ大統領も、こうした見解を支持してきた。米国議会にもICBM戦力の撤廃を望む声は見受けられない。

マティス国防長官は、トランプ氏によって登用される以前から、ICBM戦力に対して疑問を呈してきた。その理由の1つは誤射の危険があることだ。2015年、元海兵隊大将のマティス氏は上院軍事委員会で、「今こそ、地上配備型ミサイルを撤廃して、3本柱を2本柱に減らすべきではないか、と問うべきだ」と語った。

だがマティス氏は、国防長官指名を巡る上院公聴会において、今ではICBM維持を支持していると語った。強化格納庫に収められたICBMによって抑止の「層(レイヤー)」が追加される、と述べた。

国家安全保障会議の広報担当者は、ICBM戦力の維持について、決定は行われていないと語る。大統領は年末までに核政策の検証を行うよう命じており、それまでは何も決定されないという。

ICBMは、米国が30年間で少なくとも1兆2500億ドル(約139兆円)を投じる「核戦力近代化プログラム」の一部であり、精度と破壊力向上に向けた改造や更新が行われている。また、2030年頃の配備を目指して、新型ICBMの製造も進められている。

米国空軍は、「ミニットマンIII」が、誘導システムの改善と第3段エンジンの大型化によって精度が向上し、より大きな弾頭が搭載可能になったことを確認した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

25年の利下げ幅、従来より縮小すると予想=シカゴ連

ビジネス

インフレ見通し懸念し利下げに反対=クリーブランド連

ビジネス

今週の利下げはきわどい判断、来年は2回以下の可能性

ビジネス

FRBは利下げ軌道維持も不確実性残る、データに依存
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「汚い観光地」はどこ?
  • 6
    国民を本当に救えるのは「補助金」でも「減税」でも…
  • 7
    クッキーモンスター、アウディで高速道路を疾走...ス…
  • 8
    「え、なぜ?」南米から謎の大量注文...トレハロース…
  • 9
    大量の子ガメが車に轢かれ、人間も不眠症や鬱病に...…
  • 10
    「中国を止めろ!」沖縄上空で米軍<核>爆撃機と航…
  • 1
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 2
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いするかで「健康改善できる可能性」の研究
  • 3
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 4
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 5
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 6
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 7
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中