米核戦略にICBMは必要? 過去の失敗事例から専門家は疑問の声
北朝鮮の脅威
トランプ大統領には核戦力を扱うスキルが欠けているとの懸念は的外れだ、と国家安全保障会議の広報担当者は語る。「大統領は、核戦力の運用を巡るあらゆる判断を下すため、卓越した準備を行っている」
もっとも、ICBMを巡る疑問が生じたのは、政権交代する以前からだ。
懐疑派は、北朝鮮のような脅威に対する抑止力としてICBMは、ほぼ無意味だと断言する。地上配備型ミサイルの目標となる仮想敵国はただ1つ、ロシアだけだというのだ。
北朝鮮や中国、イランなどの敵対国に対して北米大陸からICBMが到達するにはロシア上空を通過する必要があり、ロシア政府による意図的、あるいは偶発的な報復核攻撃を招くリスクが存在するからだ。とはいえ、少数のICBMは中国を狙っている。ロシア、中国両国に対して戦争状態となる場合に備えるものだ。
批判は高まっているものの、今のところ米国がICBM戦力を捨てる可能性はほとんどない。ICBM肯定派にとっては、「三本柱」のこの部分を捨てることは、3本脚の椅子の1本を切り取るに等しい。
オバマ前大統領もトランプ大統領も、こうした見解を支持してきた。米国議会にもICBM戦力の撤廃を望む声は見受けられない。
マティス国防長官は、トランプ氏によって登用される以前から、ICBM戦力に対して疑問を呈してきた。その理由の1つは誤射の危険があることだ。2015年、元海兵隊大将のマティス氏は上院軍事委員会で、「今こそ、地上配備型ミサイルを撤廃して、3本柱を2本柱に減らすべきではないか、と問うべきだ」と語った。
だがマティス氏は、国防長官指名を巡る上院公聴会において、今ではICBM維持を支持していると語った。強化格納庫に収められたICBMによって抑止の「層(レイヤー)」が追加される、と述べた。
国家安全保障会議の広報担当者は、ICBM戦力の維持について、決定は行われていないと語る。大統領は年末までに核政策の検証を行うよう命じており、それまでは何も決定されないという。
ICBMは、米国が30年間で少なくとも1兆2500億ドル(約139兆円)を投じる「核戦力近代化プログラム」の一部であり、精度と破壊力向上に向けた改造や更新が行われている。また、2030年頃の配備を目指して、新型ICBMの製造も進められている。
米国空軍は、「ミニットマンIII」が、誘導システムの改善と第3段エンジンの大型化によって精度が向上し、より大きな弾頭が搭載可能になったことを確認した。