アングル:日本経済下押し警戒、トランプ関税 直撃回避を模索
2月3日、米国の関税政策に対する警戒が広がり、東京株式市場で日経平均は1000円以上下落した。写真は、横浜港で輸出を待つ新車。2017年11月、横浜で撮影(2025年 ロイター/Toru Hanai)
Takaya Yamaguchi Kentaro Okasaka
[東京 3日 ロイター] - 米国の関税政策に対する警戒が広がり、3日の東京株式市場で日経平均は1000円以上下落した。関税対象のメキシコとカナダ、中国にある日系企業の拠点数は3万超。日本経済の下押し要因になりかねず、政府は相談窓口を通じて進出企業を支援する方針だ。3日午前に会見した林芳正官房長官は「十分に精査した上で適切に対応していく」と述べた。
とりわけ警戒されているのが、日本の国内総生産(GDP)の約3%を占める自動車産業への影響。メキシコは同産業の集積地で、自動車市場として世界で2番目に大きい米国への輸出拠点となっている。日本の自動車メーカーのうち、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車が工場を構える。トヨタとホンダはカナダでも生産している。
「きょうの日本株が中国株より大きく下げているのは、メキシコで米国向け自動車を生産している日産自動車とマツダが短期的に競争力を失うことへの懸念からだろう」と、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは話す。
トランプ米大統領は4日からカナダとメキシコからの輸入品に25%、中国からの輸入品に10%の関税を課す大統領令に署名した。みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストが試算する日本のGDPへの下押し影響は約4000億円(0.07%)。より深刻なのは現地企業の対米輸出にかかる関税の影響で、国民総生産(GNP)に最大1兆9000億円のマイナスとみる。
取引先についていく形で多くの部品や素材メーカーが現地へ進出し、外務省の調査によると、2023年10月時点でメキシコには1498、カナダには982、中国には香港含め3万1060の日系企業の拠点がある。特にメキシコとカナダで生産した部品や素材は現地で消費されるだけでなく、米国へ輸出もしている。
経済産業省は2日、日本貿易振興機構(ジェトロ)とともに日本企業の相談窓口を設置した。カナダ、メキシコ、中国に進出する企業を含め、関税措置の影響を受ける可能性がある企業を支援するのが目的で、ジェトロ広報によると、3日午前時点で東京の本部に3件の問い合わせがあった。いずれも製造業者からで、事業への影響に関する相談だった。地方のほか、米を含めた4カ国に設置する事務所に寄せられた相談件数はまだ把握できていないという。
一方、ジェトロの研究機関であるアジア経済研究所は、3カ国への関税が日本のGDPを逆に0.2%押し上げるともみている。同研究所によると、2022年の米自動車産業の輸入先は1、2位がメキシコとカナダ、日本はわずかな差で3位だった。メキシコとカナダからの輸入が割高になることで、日本からの輸入が増えるとの見立てだ。
もっとも、この試算は日本が米国の関税対象にならないことが前提となる。石破茂首相は7日に日米首脳会談に臨む予定で、複数の関係者によると、米国の貿易赤字を問題視するトランプ政権との摩擦を防ぐ手手立てを模索している。米産LNGの購入を拡大する意向を伝えるほか、トランプ氏が意欲を示すアラスカ州のガス開発計画を支援する可能性も議論している。
林官房長官は3日の会見で、日本が米国の関税対象となる可能性を問われ、「米国の政策について予断をもって答えることは差し控えたい」と述べた。
(山口貴也、岡坂健太郎 取材協力:杉山健太郎、竹本能文、Tim Kelly 編集:久保信博)