中国「民主村」は今 監視と密告に口つぐむ住人たち
抗議活動は数カ月続いたが、数百人規模の治安部隊がゴム弾や催涙ガスを発射して制圧に動いた。さらに、被害者や目撃者によると、村人は警棒で殴られ、抗議活動はねじ伏せられた。
昨年12月、烏坎村を管轄する海豊県の人民法院は、違法な集会や交通妨害、虚偽情報の流布などの容疑で、村民9人に対し2年から9年の実刑判決を言い渡した。同法院のウェブサイトが明らかにした。
ロイターは海豊県および烏坎村を管轄する陸豊市にコメントを求めたが、現時点で回答はない。
このうちZhang Bingchai氏は虚偽情報を流布したとして2年の実刑判決を受けている。2人の知人によると、Zhang氏は村の状況を携帯電話で外部に伝え、当局によるデモ鎮圧の様子を撮影し映像をネットに投稿したのだという。
抗議運動に対する当局の強硬路線は、社会の安定を確保したい中国政府の思惑を反映している、と烏坎村を何度となく訪問したことがあり、北京に同村の支援団体を創設したXiong Wei氏は語る。
「そして彼らは大きな成功を収めた。人々は誰も顔を上げようとしなくなった。だが(土地収用)問題は解決していない」と付け加えた。
道沿いに立ち並ぶプロパガンダ
武装警官が警戒に当たる検問所を抜け、烏坎村へと続く幹線道路に入ると、道沿いに並ぶ巨大な看板広告や鮮やかな旗が視界に飛び込んできた。これらは社会の安定と平和をうたったプロパガンダで、こうした広告やポスターは村の至る所にある。
「人民を愛する戦略を遂行するために団結し前進しよう」と書かれた看板には、銃を手に取りながら、天安門広場に掲げられた毛沢東の肖像画を見つめる兵士たちの頭上を、ハトの群れが飛ぶ様子が描かれていた。
「警察と人民が協力し、調和のとれた文化的な烏坎村を築く」とも書かれている。また別の看板は人々に「新たな精神」を呼びかけていた。
だが水面下では、ロイターの取材を受けた村民たちは、拭いきれない大きな憤りを抱えていた。
「村は壁にぶち当たった」とある村人はロイターに語った。「人々はもう何もしないだろう」
ニューヨークで逃亡生活を送るZhuang氏は、今後も意見を述べることをやめないと語った。同氏によれば、村に残してきた彼の母親は嫌がらせを受け、自宅に監視カメラが設置された。そこを訪問する者も当局の尋問を受け、なかには拘束された人もいるという。ロイターは彼の発言を独自に確認できなかった。
村の抗議運動を率いていた他の幹部たちは辞職後に、拘束されたか、嫌がらせを受けている、と同氏は語る。「私以外、皆が口を閉ざしてしまった。いまは静まり返っている」
[烏坎村(中国広東省) 10日 ロイター]
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