最新記事

アメリカ政治

トランプの税制改革案、財政赤字拡大懸念が成立のネックに

2017年11月14日(火)09時15分

11月10日、トランプ米大統領と与党・共和党指導部が最優先の政策課題として推進している税制改革は、党内にくすぶる財政赤字大幅拡大への不安感が法案成立の妨げになりかねない。写真は9日、米議会で改革法案を公表する共和党幹部ら(2017年 ロイター/Aaron P. Bernstein)

トランプ米大統領と与党・共和党指導部が最優先の政策課題として推進している税制改革は、党内にくすぶる財政赤字大幅拡大への不安感が法案成立の妨げになりかねない。

野党・民主党がこうした税制改革に一致団結して反対する限り、上院で52議席の共和党は、3人の造反者が出ただけで法案成立に必要な票数を確保できなくなる。

トランプ氏と共和党は、政権発足から10カ月近くが経過してもなお目玉となる法案を実現できていないだけに、税制改革の議会通過にしくじれば来年11月の中間選挙に悪影響を及ぼす恐れがある。

非営利団体の「責任ある連邦予算委員会」は10日、上院共和党の税制改革法案を「予算を致命的に破壊する欠陥作品」と酷評し、既に下院の委員会で承認された同法案も同様に批判した。

議会の租税専門家によると、共和党案では今後10年で年間の財政赤字が1兆5000億ドル、連邦債務は20兆ドルも膨らむ。

責任ある連邦予算委員会の推計では、1兆5000億ドルの赤字のうち9000億ドルは法人減税で、残りが富裕層だけが得をする相続税の軽減など個人向けによって生み出される。

別の非営利団体のタックス・ファウンデーションは、10年で増える財政赤字額を1兆7800億ドルと予想。同じ期間に減税で米経済が3.7%成長し、92万5000人のフルタイム雇用が創出され、賃金が2.9%上がることで税収が拡大して一部の赤字を穴埋めできるとはいえ、差し引きで5160億ドルの赤字が残るという。

一方で共和党は伝統的に財政赤字を厳しく抑制する立場を取り、民主党の歳出プログラムに反対して将来の国民に借金の負担を背負わせるべきでないと論じてきた。

ところが現在提出されている税制改革法案はそうした過去の主張とは正反対の内容で、財政赤字拡大の容認を求めている。

もっとも今のところ表立って懸念を表明している共和党上院議員は一握りだけだ。フレーク議員は9日、「現状の財政改革案が納税者と米経済にとっての長期的課題を無視したまま、短期的な修正によって、既に膨大な金額になっている債務をさらに膨らませるのではないか、と引き続き懸念している」と語った。

ランクフォード議員は「税負担軽減に取り組むに当たり、われわれは国家国民を守り、基本的な政府のサービスを提供し、連邦債務に向き合う責任を見失ってはならない」と警告した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中