トランプ、習近平の懐柔策に「米中貿易不均衡は歴代大統領の責任」
称賛と影響力
だがトランプ大統領は、中国ひいては習主席が、台頭する大国として振りかざす強い影響力を認識しているとみられ、最近は同主席を「キング」に例えている。また、自身が抱える最大の世界安保問題に対処するため、北朝鮮に対する中国の影響力が必要だと確信している。
しかし、ご機嫌取りは「諸刃の刃」である。中国は、北朝鮮問題でさらなる行動を求める米国の圧力をかわし、貿易面においては、トランプ政権誕生で不可避と思われていた緊張の高まりを回避したいと考えている。トランプ氏は大統領選挙期間中、貿易慣行によって米国を「レイプ」しているとして中国を非難していた。
「中国は個人的関係を非常に重視する。中国の指導部がトップダウンであることを考えると、習主席が外国のリーダーと非常に仲良く付き合っているのを目にすることは特に重要だ」と、中国のシンクタンク「中国グローバル化研究センター(CCG)」の王輝耀センター長は指摘する。
「良好な雰囲気のなかで、構造的問題に取り組む方がずっとやりやすい」
トランプ大統領と習主席のもっと個人的な交流の一部は、中国のソーシャルメディアで際立った役割を担っていた。そのなかには、トランプ氏の孫娘が「習おじいちゃん」「(習夫人の)彭おばあちゃん」と歌っている動画も含まれている。
なかでも、紫禁城で習主席がトランプ大統領に対し、中国は現在あるどの国よりも長く文化的歴史を保っていると説明している動画は特に人気があった。
「われわれはドラゴンの子孫と呼ばれている」と、習氏はトランプ氏に説明すると、トランプ氏は「それは素晴らしい」と笑顔で応えている。
トランプ大統領は9日の共同記者会見で、習主席のことを「非常に特別な人」とさえ表現し、あまりに熱が入っていたように見えたため、大統領が敬意を表しすぎるのではないかとの質問をティラーソン米国務長官は受けたほどだった。
それに対し同国務長官は「全くそのようには感じなかった」と答えた。
しかしホワイトハウスは、共同会見で両首脳が質問を受けないことを望む中国政府の意向を受け入れた。
習主席は公の場で、トランプ大統領からの個人的称賛に「返礼」はせず、いつものしかめっ面を貫いた。だがそんな習氏も、トランプ氏が貿易赤字を中国のせいにせず、習氏について物事を成し遂げる人物だと改めて語ったときにはほほえんで見せた。
「中国を責めたりしない」と、トランプ大統領は貿易赤字を巡り、こう語った。
「自国の市民のために他国を利用する国を責めることができようか。私は中国を大いに称賛する」
(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)
[北京 9日 ロイター]
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