最新記事

アジア歴訪

日本はよくトランプを手なずけた 中国に勝ち目はあるか?

2017年11月8日(水)19時30分
オービル・シェル(米チャイナファイル発行人)

歌手のピコ太郎(右)まで動員してトランプを歓待した日本政府 PIKOTARO/AVEX MANAGEMENT INC/ REUTERS

<トランプと安倍の蜜月、その向こうにそびえる習近平の大きな影。アメリカの対中政策は転機を迎えた。習の言う「新しい世界」でアメリカはどう振る舞うべきか。これはそれをテストする旅だ>

(ドナルド・トランプ米大統領は11月3日より、12日間のアジア歴訪中だ。日本に始まり、韓国、中国、ベトナム、フィリピンの5カ国を訪問する。途中、ロシアのプーチン大統領とも会談する予定だ。アジア・ソサエティーの米中関係センター所長で米オンライン誌「チャイナファイル」の発行人を務めるオービル・シェルは、この旅を同行取材することになった。この記事は、旅の途中でシェルがシリーズで寄稿した記事の第1回)

今回のアジア歴訪で多くの人が恐れているのは、中国の習近平国家主席が、いつものように過剰とも思える壮大なセレモニーで訪問者を圧倒し、さすがのドナルド・トランプ米大統領も怖気づいてしまうのではないか、という点だ。しかし、11月5日、5カ国歴訪の最初の目的地である日本に到着したトランプの様子を見る限り、その心配はなさそうだ。トランプは、海外駐在米軍(日本だけでも5万人に上る)が持つ迫力を認識し、米兵に演説することで自らの威光を見せつけた。

F16、F35を従えて

大統領専用機エアフォース・ワンが東京郊外の横田基地に着陸したころ、基地の巨大な格納庫では、報道陣と数千人の米陸海空軍の兵士、自衛隊の隊員数百名が、大統領の到着を待っていた。格納庫内に設けられた演壇の背後には巨大な星条旗が飾られていた。このセレモニーのために呼び出されたF-16戦闘機とF-35戦闘機も機首を演壇に向けて駐機していた。

大歓声に迎えられたトランプは威厳たっぷり、きっぱりとした口調で、「いかなる人物、独裁者、政権、国家といえども、アメリカの決意を決して過小評価すべきではない」と言い放った。この演説は、アメリカがアジアでプレゼンスを持つことの必要性を示し、アジアの中でも「かけがえのないパートナーでありアメリカの重要な同盟国」である日本の存在を明確に打ち出した。演説の中でトランプは繰り返し、日米が同盟国として特別な関係にあることを強調した。

トランプが日米同盟の重要性を強調したこと、そして市場経済や民主主義といった共通の価値観を持つ日本、オーストラリア、インドなどと連携し、太平洋からインド洋に至る「自由で開かれたインド太平洋地域」の実現に意欲を示したことは、非常に興味深い。なぜならそれは北朝鮮だけでなく、中国に向けたメッセージでもあるからだ。北朝鮮による核武装の脅威にかこつけて、南シナ海や東シナ海で軍事的プレゼンスを急拡大させる中国をトランプは牽制した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4

ビジネス

ECB、12月にも利下げ余地 段階的な緩和必要=キ

ワールド

イスラエルとヒズボラ、激しい応戦継続 米の停戦交渉

ワールド

ロシア、中距離弾道ミサイル発射と米当局者 ウクライ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中