ベトナムを襲う急速高齢化の危機
実際のところ、ベトナムが経済成長を続けるには今後4年間で空港や鉄道、道路などのインフラ整備に少なくとも4800億ドルを投じなければならないとされる。
しかし既に政府の金庫は底を突き、ホーチミン市(旧サイゴン)の地下鉄建設は遅れに遅れている。こんな状況で緊縮財政に転じれば、インフラ整備の目標達成は不可能になる。
状況の打開には民間投資が欠かせないが、現状でインフラ投資に占める民間資金の割合は1割程度だ。そして政府が一段の経済改革を進めない限り、民間投資は増えない。
共産党独裁の正統性を国民に納得させるには、経済成長を維持して国民の生活を改善していくしかない。ベトナム国民が現状を受け入れているのは、共産党政権が教育や医療などの基本的サービスをそれなりに整備してきたからだ。
しかし、この現状が続く保証はない。何しろ汚職が増えている。国際的な汚職監視団体トランスペアレンシー・インターナショナルの今年の報告では、ベトナムは汚職が蔓延する国ランキングでアジア第2位。子供をいい学校に入れたり、優先的に入院させるために「潤滑油」を買わされた国民は65%に上る。
経済成長を維持し、生活レベルの改善を続けられなければ、国民はますます政府に不満をぶつけるようになる。しかもそこに人口構成の高齢化という重荷がのしかかる。ベトナム共産党の未来は暗くなるばかりだ。
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From thediplomat.com
[2017年10月31日号掲載]