「トランプ歓迎会に元慰安婦」の陰に中国?
これに基づいて、11月7日付のコラム「中国はトランプ訪日をどう見ているか」に書いた、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相の国会における以下の回答が成されているのである。
1.米国のミサイル防衛(MD)体制に加わらないという韓国政府の既存の立場に変更はない。
2.韓米日安保協力が三者軍事同盟に発展することはない。
3.THAADの追加配備は検討していない。
これ以降、中国の貿易や観光などに関する対韓国政策が突然緩和したのを、日本の皆さんもご存じだろう。
康京和発言の中で日本と深く関連するのは「2」で、文在寅は「日本と軍事同盟を結ぶことは絶対にあり得ない」と何度も宣言している。中国は北朝鮮問題で対中包囲網が形成される危険性を、韓国を囲い込むことによって完全に打破したのだ。米中とは蜜月でいたい中国としては、狙うは日本だけなのである。
サンフランシスコからのメール――トランプは事前に知っていたのか
10月末から、突然サンフランシスコの反日華人華僑団体からのメールが増え始めた。在米コーリアンともタイアップしながら動いている団体だ。
そこには"comfort women" " sex slaves " という、目にしたくない単語が数多く使われている。そしてなぜか、アメリカのウィルバー・ロス商務長官の顔と肉声がある。話している内容は関係ない話だが......。
最初は、「なぜ――?」という強い違和感を覚えた。
しかし、あのストレートで感情をむき出しにするトランプ大統領が、ソウルでの歓迎夕食会に元慰安婦が同席していることに対して特に嫌な顔もせず、おまけにハグまでしたのを見ると、ひょっとしたら予め知っていたのではないだろうかという疑念を抱かせる。
だとすれば、日本ではあれだけ安倍首相との緊密さをアピールしていたトランプ大統領が、韓国ではそれなりに韓国民感情に添った反日につながる行動ができるというのは、日本人としては何とも複雑だ。
中国ではトランプ大統領が訪日前にハワイに立ち寄り、「真珠湾を忘れるな!」という、かつて真珠湾奇襲攻撃をした日本への反撃号令に相当する言葉を発したことを、相当に重要視している。トランプ大統領は、なぜハワイで日本に対する攻撃司令に相当する言葉を、いま、このタイミングで発したのだろうか?
さて、となると、トランプ大統領は習近平国家主席と、いかなる「密約」をするのか、注意していなければならない。高い武器だけ売りつけられて、気が付けば日本が外されていたというようなことにならないことを祈りたい。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。