サウジの汚職摘発、ムハンマド皇太子への権力集中で改革進展か
金融市場にとっては恐ろしいのは、今回の取り締まりによって長年続いてきたビジネス慣行などが崩れることで、資金の流出や富裕層の国外脱出が起きれば逆効果になるかもしれない。
ヘイケル教授は、ビジネス界で指導的な立場にある人々が拘束されており、民間セクターが不安を強め、かつてないような資本逃避が起きるかもしれないと話す。
一方、企業幹部の多くは、ムハンマド氏が富裕層に対して、国外に溜め込んでいるドル資金を本国に還流するよう圧力を掛けるとみている。こうした資金はムハンマド氏が計画しているプロジェクトを立ち上げる資金になりそうだ。
独断方式
S・ラジャラトナム国際研究大学院のシニアフェロ―、ジェームズ・ドーシー氏は今回の摘発について、王族内や軍の内部で高まっていた改革への反発に対してムハンマド氏が反撃に出たと指摘。コンセンサスを無視した進め方に疑問を呈した。
しかしサウジで改革を進めるには、独断方式が最良との声が多い。地元大手銀行のチーフエコノミストは、改革がなかなか進まないことにムハンマド氏が業を煮やしていたことが摘発に結び付いたとの見方を示した。
例えば、サウジアラムコの5%株放出計画は、何カ月も話し合いが続いているのに具体的な動きがほとんどない。
アドバイザー業務を手掛けるMENAカタリスツのチーフエグゼクティブのサム・ブラティス氏は「今回外国投資家に送られているメッセージは、ムハンマド氏の改革失敗に賭ける投資は賢明でないというものだ。同氏はやりたいことがあればできると証明してみせた。これは権力の安定化ではなく、著しい強化だ。政策決定の推進力は加速する」と強調した。
(Andrew Torchia記者)
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