最新記事

中東

サウジの汚職摘発、ムハンマド皇太子への権力集中で改革進展か

2017年11月7日(火)08時53分

金融市場にとっては恐ろしいのは、今回の取り締まりによって長年続いてきたビジネス慣行などが崩れることで、資金の流出や富裕層の国外脱出が起きれば逆効果になるかもしれない。

ヘイケル教授は、ビジネス界で指導的な立場にある人々が拘束されており、民間セクターが不安を強め、かつてないような資本逃避が起きるかもしれないと話す。

一方、企業幹部の多くは、ムハンマド氏が富裕層に対して、国外に溜め込んでいるドル資金を本国に還流するよう圧力を掛けるとみている。こうした資金はムハンマド氏が計画しているプロジェクトを立ち上げる資金になりそうだ。

独断方式

S・ラジャラトナム国際研究大学院のシニアフェロ―、ジェームズ・ドーシー氏は今回の摘発について、王族内や軍の内部で高まっていた改革への反発に対してムハンマド氏が反撃に出たと指摘。コンセンサスを無視した進め方に疑問を呈した。

しかしサウジで改革を進めるには、独断方式が最良との声が多い。地元大手銀行のチーフエコノミストは、改革がなかなか進まないことにムハンマド氏が業を煮やしていたことが摘発に結び付いたとの見方を示した。

例えば、サウジアラムコの5%株放出計画は、何カ月も話し合いが続いているのに具体的な動きがほとんどない。

アドバイザー業務を手掛けるMENAカタリスツのチーフエグゼクティブのサム・ブラティス氏は「今回外国投資家に送られているメッセージは、ムハンマド氏の改革失敗に賭ける投資は賢明でないというものだ。同氏はやりたいことがあればできると証明してみせた。これは権力の安定化ではなく、著しい強化だ。政策決定の推進力は加速する」と強調した。

(Andrew Torchia記者)

[ドバイ 5日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

24年度税収が過去最高へ、補正で73兆円台半ばに増

ビジネス

中国BYD、サプライヤーに値下げを要請=報道

ワールド

「103万円の壁」突破の経済効果、与党提示の試算に

ワールド

ブラジル大統領、EU・メルコスル貿易協定の年内締結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 3
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウクライナ無人機攻撃の標的に 「巨大な炎」が撮影される
  • 4
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 5
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 6
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 7
    「健康寿命」を2歳伸ばす...日本生命が7万人の全役員…
  • 8
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 9
    未婚化・少子化の裏で進行する、「持てる者」と「持…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中