最新記事

トランプ訪中

トランプ訪中、主人公はアラベラちゃん

2017年11月10日(金)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

この演出をしたのは、キッシンジャーのアドバイスを受けた駐米中国大使・崔天凱(さい・てんがい)だ。キッシンジャーはトランプが大統領に就任する前から崔天凱をイヴァンカとその夫クシュナーに接触させ、トランプを親中に持っていくように仕掛けていた(詳細は拙著『習近平vs.トランプ 世界を制覇するのは誰か』)。

9日のトランプ歓迎夕食会では、スクリーン一杯に中国語で中国の歌を歌うアラベラちゃんの姿が大きく映し出された。CCTVでは、トランプのとろけるような笑みがクローズアップされた。

たしかに日本でもアラベラちゃんが真似をしていたピコ太郎さんも夕食会に姿を現して場を和ませたようだが、トランプ側から積極的にアピールしている「中国の歌を歌う、中国語ペラペラの孫娘アラベラちゃん」とは、首脳同士の親密度を増させる意味で、かなりの違いがあるのではないだろうか。

陰で活躍していた清華大学顧問委員会の米大財閥メンバー

それ以外にも活躍していたのは習近平の母校、清華大学にある経営管理学院顧問委員会の米財界人たちだ。そこにはゴールドマンサックスやJPモルガン・チェースCEOなど、目がくらむほどの米財界の大物たち数十名が名を連ねている(この全員のメンバー・リストは『習近平vs.トランプ 世界を制覇するのは誰か』のp.31~34に掲載)。

第19回党大会と一中全会が終わると、習近平は早速、この顧問委員会のメンバーと歓談した。ここで既に今般の米中首脳会談の基本路線は決まっていたと見ていいだろう。

マクマスター大統領補佐官が米中は「ウィン-ウィン」関係

第19回党大会後、トランプ訪中を「国事訪問+」として華々しく宣伝し始めたCCTVは、マクマスター大統領補佐官(安全保障担当)を単独取材した場面を、何回も繰り返し報道している。

マクマスターはCCTV記者の質問に、にこやかに回答し、「米中関係はウィン-ウィンの関係を続けていくだろう」と述べている。特に北朝鮮問題に触れることもなく(触れたかもしれず、CCTVがカット編集しているのかもしれないが)、ひたすら「相互信頼と互恵関係に基づき、経済貿易方面で大きく協力していくだろう」という趣旨のことを、安全保障担当の大統領補佐官に言わせていることが印象的だった。

28兆円の投資協定

案の定、ハイライトは米中企業家代表大会だった。習近平とトランプが舞台に座る中、トランプに同行した29社の米企業家たちが、中国側企業家代表たちと投資協定に署名した。

その額、28兆円。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中