最新記事

トランプ訪中

トランプ訪中、主人公はアラベラちゃん

2017年11月10日(金)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

トランプを迎えた中国の晩餐会でスクリーンに大写しされた、中国語の歌を歌うアラベラちゃん Jonathan Ernst- REUTERS

皇帝級の扱いを受け、28兆円もの投資協定を結んだトランプ大統領は満足げだった。その陰には孫娘アラベラちゃんの活躍がある。米中両巨頭を演出した習近平国家主席の狙いを読み解く。

「国事訪問+」――皇帝級のおもてなし

第19回党大会が終わると、中国の中央テレビ局CCTVでは、「国事訪問+(プラス)」が画面を埋め尽くした。この「+(プラス)」は「超(スーパー)」という意味で、習近平政権に入ると「インターネット+」など、今までとは違うという意味の「+」が流行っている。

その「国事訪問+」では、中国の歴代皇帝が住んでいた故宮を貸し切って、習近平自身がトランプ大統領を歓待した。

清王朝の滅亡とともに、故宮には皇帝がいなくなってしまったわけだが、それ以来、中華民国においても、そして中華人民共和国(現在の中国)においても、建国後、故宮に外賓を招いて夕食会を催したことなどない。つまり、建国後、初めての出来事なのだ。

それほどスケールの大きな歓待をやってのけたのは、まるで習近平が「紅い皇帝」なら、トランプは「世界の皇帝だ」という位置づけを演出したかったからだろう。

米国内でバッシングを受けているトランプとしては、悪い気はしなかっただろう。

こうしてトランプを皇帝の高みにまで持ち上げてから首脳会談に入る。

そうすればトランプは中国に無理難題を言ってはこない。計算し尽くされた「おもてなし」だった。

親中派・イヴァンカさんの娘アラベラちゃんは大活躍

それに対してトランプは、孫娘のアラベラちゃん(6歳)が中国語の曲を歌っている動画をタブレット端末で披露した。そして「中国語のレベルはどうか?」と聞くトランプに対して「すばらしい!レベルはA+(プラス)だ!」と絶賛したのである。ここで言う「A+」は上述した「国事訪問+」との掛詞だ。

「こんなすばらしいお孫さんを持って、誇らしいでしょうねぇ」とさらに讃辞を続ける習近平に、トランプは「彼女は実に賢いんですよ......」と照れながらも、孫娘をこよなく愛する満面の笑みを浮かべた。

この瞬間、故宮の中でお茶を楽しんでいたトランプ夫妻と習近平夫妻は、「家族ぐるみの付き合い」として距離を縮めたのだった。

そもそもトランプが最も可愛がり信頼している娘のイヴァンカさん(大統領補佐官)は、根っからの親中派だ。3人の子供たちには、物心ついたときから中国語を学ばせている。家政婦さんも在米華人。

4月の習近平訪米の際には、アラベラちゃんは習近平夫人・彭麗媛がかつて歌っていた国民歌である「茉莉花(モア・リー・ホア)」を中国語で歌って習近平夫妻を喜ばせた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏のロシア産原油関税警告、市場の反応は限定

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、突っ込み警戒感生じ幅広く

ワールド

イスラエルが人質解放・停戦延長を提案、ガザ南部で本

ワールド

米、国際水域で深海採掘へ大統領令検討か 国連迂回で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中