トランプ政権の移民包囲網は子供にも容赦なく迫る
母親の面会も許されない
その夜、サンアントニオ在住の移民問題専門の弁護士レティシア・ゴンサレスは事件を知らされ、直ちにドリスコル小児病院へ向かった。彼女が到着したときには、制服姿の武装したICE職員5人が病室の外で待機しており、ゴンサレスが病室へ入るのを病院職員に阻止された。地元の人気スペイン語ラジオ局でこの話を暴露すると脅しをかけたところ、病院側とICE職員は折れたという。
本誌はドリスコル小児病院に取材を申し込んだが、構内に移民当局者が入った場合の方針に関してはノーコメントとのことだった。ゴンサレスの話についても、患者のプライバシー保護を理由に回答を拒否した。
ドリスコルでは今年9月にも同様の事件が起き、大きな論議を呼んだ。不法移民の夫妻が生後2カ月のわが子の治療に訪れた際、院内に入ると同時に移民当局者に拘束されたのだ。
ICE職員はゴンサレスに、ロサマリアをヒューストンの収容センターへ送ると言っていた。しかし約1時間後、救急車でサンアントニオへ移送する方針に変わったと知らされた。アメリカ永住権を持つロサマリアの祖父を保護者として認定し、彼女を退院させてほしいと訴えたが却下された。
移送の時間が迫るなか、ゴンサレスは新たなショックを受けた。ICE職員がロサマリアとカントゥと共に、救急車の患者収容部に乗ろうとしていたのだ。ロサマリアと離れて、前部座席に座ってほしいという要求は聞き入れられた。
「彼女は脳性麻痺で、実年齢は10歳でも精神的には5~6歳児に近い」と、ゴンサレスは言う。「武装したICE職員が横に座る必要がどこにあるのか」
DHSは今後、ロサマリアを母親がいる自宅へ帰すべきかどうかを判断することになると、弁護士のガルベスは話す。通常なら2カ月以上かかるプロセスだが、状況に配慮して迅速に対応するとの確約を得たという。「約2~3週間以内に決定を通知すると伝えられた」
それまで、ロサマリアはサンアントニオの青少年移民収容センターに滞在することになる。面会は可能だが、訪問を許されているのは米市民権を持つ者だけ。つまり母親と会うことはできない。
「病院から連れ出されるとき、明らかに(ロサマリアは)動揺していた」と、ゴンサレスは言う。「母親に会いたいと、ひたすら望んでいる」
ゴンサレスによると、センターへの移送時、ロサマリアの健康状態は安定していた。母親のデラクルスはその点については喜んでいるものの、娘がセンターでどんな思いをするかと不安を感じている。
「いつも一緒だったのに、あの子が私を必要としている今、そばにいてあげられない」。デラクルスはNBCのスペイン語チャンネル、テレムンドでそう嘆いた。「娘がどんな扱いを受けるのか、私には分からない。怖くてたまらない」
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[2017年11月 7日号掲載]