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ISIS劇場型テロで世界に広がる「テロ疲れ」

2017年11月10日(金)16時20分
アマーナス・アマラジンガム(戦略対話研究所上級研究員)、コリン・クラーク(ランド研究所)

特定の集団が攻撃を繰り返せば社会はいずれ無関心になると、オーストラリア国立大学のグラント・ワードロウは指摘する。マンネリを打破するには、より派手な攻撃が必要だ。社会運動研究の権威ウィリアム・ギャムソンがかつて述べたように「不測かつ散発的な事態ほどテレビ映えする」ので、集団は「さらに派手で劇的な行動に走る」。

ランド研究所のテロ専門家ブライアン・ジェンキンズは70年代に「テロは演劇」だと指摘した。それは今も同じだが、テロ関連のニュースが24時間流れっ放しの中、メディアの関心を引き付けておくには大量の犠牲者を出すか桁外れの暴力を起こすしかない。結局のところ、政治的メッセージを広く伝えることがテロの主要な目的なのだ。

今回のニューヨークのテロも欧米で混乱を引き起こし、恐怖の種をまくための稚拙な試みの1つだった。ニューヨークは今後もテロ組織の標的の筆頭格であり続けるだろう。

とはいえテロリストたちは切羽詰まっているのかもしれない。最近は15年のパリ同時多発テロのような綿密に計画されたテロに代わって、ナイフや車を使う通り魔的なテロが増えている。

テロはもはや現代世界の一部になっており、テロへの対抗力を強化する政策が必要だと欧米の政府関係者は指摘する。ISISがテロを日常化したことで、恐怖をあおるという本来の目的から遠ざかっているのは、その点では好都合かもしれない。

<本誌2017年11月7日発売最新号>

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