高齢化日本にヨーロッパが学ぶべき2つの教訓
「借金」なき成長への道
ヨーロッパが日本から学ぶべき第1の教訓は、人々が過剰貯蓄に走りがちな高齢化社会でも、経済成長は不可能ではないことだ。日本のインフレなき成長を見て、ECB(欧州中央銀行)は、「2%近い」インフレ目標の達成は、さほど重要ではないかもしれないと気付くべきだ。
ユーロ圏の諸事情を考えると、いずれにせよECBは、しばらくの間、国債の買い入れを控えなければならないだろう。つまり目に見える物価上昇がないなか、国債買い入れを続ける日本銀行と同じ手法は取れない。
日本からの第2の教訓は、大幅な貯蓄超過状態の国は、莫大な政府債務に耐えられるということだ。なにしろ国債の大部分が国内で消化されるため、国内で資金繰りができる。もちろん、だからといって借金を増やし続けることが望ましいはずはない。
日本の政府債務は、政府系金融機関の金融資産を差し引いても、GDP比150%を超える。しかもこの数字は上昇し続けている。このことは財政に関して重要な教訓を与えてくれる。すなわち低成長国では、政府債務のGDP比が急速に手に負えないレベルに上昇し得る。
幸いユーロ圏諸国の政府債務は、GDP比2%程度。財政赤字をGDP比3%以内に抑えるという安定成長協定が、債務水準の安定化という点では、一定の成果を上げたようだ。
ユーロ圏諸国は、財政政策と金融政策によって景気対策を講じることが制限されている。しかしそのことが、行き過ぎた債務の増加を防ぎ、最終的には生産年齢人口をフル活用するという、成長維持の唯一の道を開いてくれるだろう。
From Project Syndicate
[2017年11月21日号掲載]