最新記事

経済

高齢化日本にヨーロッパが学ぶべき2つの教訓

2017年11月30日(木)18時30分
ダニエル・グロス(欧州政策研究センター部長)

インフレなき持続的成長を実現しつつある日本 Toru Hanai-REUTERS

<生産年齢人口のフル活用は高齢化時代に成長を維持する唯一の道>

人口動態は、運命のように変えられないものではない。長い目で見れば、子供を持つかどうかの判断には、政策が影響を与えることも多い。アメリカのように、移民が国家の人口動態を大きく変える場合もある。

だが、短期的には人口動態を急変させるのは不可能であり、そのトレンドは経済動向に幅広い影響を与える。それなのに、経済関連のリポートで人口動態は無視されがちだ。これでは、経済動向を誤って評価しかねない。そのことが最もはっきり分かるのが日本だ。

日本の実質GDPは00年から15%弱しか増えておらず(つまり年1%未満)、主要国で最も経済が停滞しているように見える。だが日本の人口動態に目を向けると、生産年齢人口(15~64歳)は、00年以降年1%近いペースで減っている。

この結果、日本の生産年齢人口1人当たりの成長は年約1.5%と、アメリカやヨーロッパを大きく上回る。米経済は00年以降35%以上拡大してきたが、生産年齢人口も大幅に増えたため、その1人当たり成長率は年1%程度にとどまる。

だが、経済学者がこの指標を使うことはめったにない。彼らが注目するのは、もっぱら1人当たりのGDP。この尺度だと、日本の成長はヨーロッパやアメリカと同程度になる。

1人当たりGDPは、潜在消費を見極めるときは有用だが、成長の潜在性を知りたいときは役に立たない。1人当たりGDPには、生産活動に大きく貢献しない高齢者や子供が含まれるからだ。いくら長寿国の日本でも、70歳を超える人が生産を大きく押し上げるとは思えない。

つまり日本は、生産年齢人口が急速に縮小しているにもかかわらず、著しい成長を遂げていると言える。そのカギの1つは、生産年齢人口のフル活用だ。日本の失業率は約3%と記録的低水準にあり、働ける人の80%近くが仕事をしている。ヨーロッパとアメリカでは70%程度だ。

日本が過去20年間、永遠にも思えるデフレを経験してきたことを考えると、この完全雇用はますます大変な偉業に見える。デフレは経済に大打撃を与えると主張してきた人たちは、大いに考えさせられるはずだ。

今後、人口動態が日本と似たような軌道を描くと考えられているヨーロッパにとって、日本から学ぶことは特に多い。ユーロ圏の生産年齢人口はここ数年全く増えておらず、いずれ日本と同ペースで減り始めるだろう。

一方、ユーロ圏の経常黒字は、日本と同じようにGDP比3%程度で落ち着きつつある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米卸売在庫、2月は0.8%増 13カ月ぶりの高い伸

ワールド

ホルムズ海峡利用料徴収は「危険な前例」、国際海事機

ワールド

ホルムズ海峡の船舶通過、停戦後も停滞 イランが航行

ワールド

イラン「地域和平にレバノン含めるべき」、停戦違反に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポケモンが脳の発達や病気の治療に役立つかも
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 6
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 7
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 10
    「嬉しすぎる」アルテミスII打ち上げのNASA管制室、…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 7
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 8
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 9
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 10
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中