最新記事

中国共産党

新チャイナ・セブンはマジック――絶妙な距離感

2017年10月27日(金)15時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

筆者が『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』で共青団派(団派)に注目して江沢民との対立構造を浮き彫りにしたのは、江沢民は共青団など経験したことがなく、日本の敗戦を受けて、あわてて共産党員に潜り込んだような人生を送ってきたからである。だから彼は共青団を経験して培われてきた生粋の党員を警戒し、むしろ怯えた。江沢民の父親は日中戦争時代の日本の傀儡政権である汪兆銘政権の役人だった。江沢民はその出自を隠蔽するために激しい反日運動を主導していくのだが、共青団との対立構造は、すでに過去のものなのである。チャイナ・セブン第一期目に、すでに喪失している。

習近平と胡錦濤との距離

10月18日の開幕式における3時間24分にわたる大演説を終えて席に戻った習近平は、自分の右隣に座っている胡錦濤の手を何度も握り笑顔を送った。そのときCCTVは習近平の「謝謝!(ありがとう!)」という言葉を拾っている。習近平は胡錦濤に「私を助けてくれて、ありがとう!」とまで言っている。

何を助けたのか。

もちろん、腐敗撲滅運動がしやすいように習近平に全ての権力を委譲し、かつ第一期チャイナ・セブンのメンバーも習近平が動きやすいように、胡錦濤は全て譲った。

胡錦濤は、習近平の座を狙っていた薄熙来を逮捕し、背後でクーデターを起こそうとしていた周永康逮捕の下準備も完遂した上で習近平に政権を渡した。

そして今回は、「胡錦濤子飼いの、すでに次期指導者に決まっていた胡春華を諦めてくれてありがとう!」と言いたかったのだろう。どんなに感謝してもしきれない気持ちだったにちがいない。

習近平は何を狙っているのか?

もちろん、一党支配体制の崩壊を防ぐことが最大の目的だ。紅い王朝を崩壊に導く「腐敗」が底なしであるだけでなく、言論統制を強化していることに対する人民の不満はくすぶっている。そのために三期続投をするための布陣である。こうしてアメリカを越えて中国を世界ナンバー1に持っていくのは、自分にしかできないと確信しているのだろう。それもトランプ政権あってのこと。『習近平vs.トランプ』こそが要である。このチャンスを逃すわけにはいかないと考えているにちがいない。

(書き始めるとキーボードを打つのが止まらない。4000字を越えてしまったので、この続きは又にしよう。長くなり過ぎて申し訳ない。お詫びする)

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中