新チャイナ・セブンはマジック――絶妙な距離感
筆者が『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』で共青団派(団派)に注目して江沢民との対立構造を浮き彫りにしたのは、江沢民は共青団など経験したことがなく、日本の敗戦を受けて、あわてて共産党員に潜り込んだような人生を送ってきたからである。だから彼は共青団を経験して培われてきた生粋の党員を警戒し、むしろ怯えた。江沢民の父親は日中戦争時代の日本の傀儡政権である汪兆銘政権の役人だった。江沢民はその出自を隠蔽するために激しい反日運動を主導していくのだが、共青団との対立構造は、すでに過去のものなのである。チャイナ・セブン第一期目に、すでに喪失している。
習近平と胡錦濤との距離
10月18日の開幕式における3時間24分にわたる大演説を終えて席に戻った習近平は、自分の右隣に座っている胡錦濤の手を何度も握り笑顔を送った。そのときCCTVは習近平の「謝謝!(ありがとう!)」という言葉を拾っている。習近平は胡錦濤に「私を助けてくれて、ありがとう!」とまで言っている。
何を助けたのか。
もちろん、腐敗撲滅運動がしやすいように習近平に全ての権力を委譲し、かつ第一期チャイナ・セブンのメンバーも習近平が動きやすいように、胡錦濤は全て譲った。
胡錦濤は、習近平の座を狙っていた薄熙来を逮捕し、背後でクーデターを起こそうとしていた周永康逮捕の下準備も完遂した上で習近平に政権を渡した。
そして今回は、「胡錦濤子飼いの、すでに次期指導者に決まっていた胡春華を諦めてくれてありがとう!」と言いたかったのだろう。どんなに感謝してもしきれない気持ちだったにちがいない。
習近平は何を狙っているのか?
もちろん、一党支配体制の崩壊を防ぐことが最大の目的だ。紅い王朝を崩壊に導く「腐敗」が底なしであるだけでなく、言論統制を強化していることに対する人民の不満はくすぶっている。そのために三期続投をするための布陣である。こうしてアメリカを越えて中国を世界ナンバー1に持っていくのは、自分にしかできないと確信しているのだろう。それもトランプ政権あってのこと。『習近平vs.トランプ』こそが要である。このチャンスを逃すわけにはいかないと考えているにちがいない。
(書き始めるとキーボードを打つのが止まらない。4000字を越えてしまったので、この続きは又にしよう。長くなり過ぎて申し訳ない。お詫びする)
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。