人口減の漁師町に募る北朝鮮ミサイル不安 「逃げる場所もない」
憲法改正、分かれる意見
えりも町の有権者の間でも自民党が掲げる憲法改正についての意見は割れている。神主の手塚裕警さん(39)は憲法は時代遅れなので「今の時代に合った憲法が必要だ」とする。
一方、内藤叔廣さん(77)は反対の意見だ。「私は(改正は)必要ないと思う。日本は戦争しないということなんだから」と指摘する。安倍自民は強くなりすぎているとして、衆院選では野党に投票する予定だ。
えりも町によると、最近のミサイル発射を受けて特段の予防措置や避難訓練などは行っていない。町内には津波や台風警報を報じるスピーカーが50箇所に設置されている。最近数カ月の間には屋内にいても警報が聞こえるように1500戸の家庭に無線装置を設置したという。
えりも町は緊急の食料や水も配備している。北海道の他の地域との交通が海岸沿いの道路に限られており、天候により交通が遮断されることがあるからだ。
えりも町の町民はサケの漁獲高減少と高齢化による後継者不足で漁業が衰退するのを懸念している。「ここは漁業の町。魚がとれないとだめな町です」と内藤さんは指摘する。漁業以外に有望な職業は少ないため若者は札幌など都会に出て行いき、両親も子供につれそうかたちで地元を離れていくこともある。えりもの人口は1960年代の9000人がピークで、今は半減した。
えりもの漁業関係者たちは北朝鮮が警告どおりに太平洋で水爆実験を行うようなことがあれば、福島第一原発事故のように海が放射能で汚染されると恐れている。「放射能で魚が全部だめになってしまう。福島のようになってしまうんじゃないか。商売にならない」とナリタさんは言う。
(マルコム・フォスター 翻訳 竹本能文 取材協力 久保信博 日本語編集 石田仁志)