最新記事

日本社会

人口減の漁師町に募る北朝鮮ミサイル不安 「逃げる場所もない」

2017年10月19日(木)19時00分

10月19日、北朝鮮の2発のミサイルがはるか上空を通過してから、北海道えりも町でコンブ漁を営む川村光代さんは緊張の日々を送っている。写真はえりも町、12日撮影(2017年 ロイター/Malcolm Foster)

北朝鮮の2発のミサイルがはるか上空を通過してから、北海道えりも町でコンブ漁を営む川村光代さん(68)は緊張の日々を送っている。

「音がすると外を見、海を見る。またいつくるんだろう」。強い風に吹かれながら、岩の上で昆布を干す川村さんは、不安を隠さない。

逃げる場所はない

衆院選を控え、安倍晋三首相は、北朝鮮による度重なるミサイル発射を国難と表現した。

8月29日と9月15日のミサイルは、いずれも襟裳岬から1000キロ以上離れた太平洋上に落下した。しかし、えりも町の住人にとってはミサイルは気味の悪い脅威だ。だれも実際には目撃したことはないからだ。

ミサイルが発射されると政府は全国瞬時警報システム(Jアラート)で携帯電話やテレビなどに国民向け情報を伝達するが、「あっという間に到着するので、逃げる場所もない」と川村さんは話す。

北朝鮮が日本を沈めると脅し、米国に到達可能な核弾頭を開発するのに伴い、安倍首相は北朝鮮に対し「対話のための対話は意味はない」「我々はもうだまされない」など、より激しい言葉遣いをするようになっている。

日本は北朝鮮からの防衛のために地上配備型の迎撃ミサイルPAC3を34基、全国に配備しているほか、ミサイル防衛能力を持つイージス艦も展開している。

北朝鮮のロケット発射により北海道の人口わずか4850人のえりも町が世界の注目を浴びるようになった。サケ漁に従事する地元の漁業関係者は安倍政権を強く支持しているものの北朝鮮にあまりに強硬な姿勢を取ればかえって日本に危険をもたらしかねないと懸念もしている

「やっぱり安倍さんじゃなきゃ、だめじゃない。今も」と自民党支持のナリタサトルさん(72)は述べる。同じく自民党支持の木下凌輔さん(23)は、「本当に次に北朝鮮が撃ったら、やり返すぐらいの感じでやってもらわないと、平和で安全に暮らせない」と話す。

一方、漁業組合の住野谷張貴さんは「安倍さんの今のやり方は強硬過ぎる。安倍さんが一人歩きしないような、けん制できるような態勢が必要と思う」と懸念する。最近の米朝首脳同士の激しい言葉の応酬は、米国よりはるかに北朝鮮に近いが故に標的にされかねないとの懸念を引き起こしている。

えりも町の大西正紀町長は、北朝鮮が何かしようとすれば「日本は射程内にある」と警戒する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ショルツ独首相、2期目出馬へ ピストリウス国防相が

ワールド

米共和強硬派ゲーツ氏、司法長官の指名辞退 買春疑惑

ビジネス

車載電池のスウェーデン・ノースボルト、米で破産申請

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中