人類の終わりを告げる鮮やかな『猿の惑星』最終章
シーザーたちは共存を求めたが人間の攻撃によって最後の戦いに立ち上がる (c)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
<『猿の惑星』の新3部作を締めくくる『聖戦記』は最高の出来栄え。人類の存在意義を痛烈に問い掛ける>
悲しいかな、人類の文明社会は終えんに向かっているようだ。現実にも、映画の世界でも。かつての大ヒット作『猿の惑星』の新3部作を締めくくる『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』では、人類が自己破壊の道の終点まで突っ走る。
終末が近いのは本作が始まる前から明らかだった。14年公開の前作『猿の惑星:新世紀(ライジング)』で、「猿インフルエンザ」によって人間は絶滅の危機に瀕する一方、高い知能を身に付けた猿には第2世代が生まれており、人類を滅亡させる脅威となっていたからだ。
愚かにも、人類は猿との平和的共存を模索せず、全面戦争を選択した。インフルエンザを生き延びた一部の人間はワクチン開発に取り組み、猿との共存を図るが、カリスマ性のある狂信的な男が部隊を率いて平和に暮らす猿たちを襲撃。収容所に押し込めて水や食事もろくに与えず、働かせ、虐待する。これは未来の寓話ではなく、かつて実際に起きたことだと誰もが思うだろう。
新3部作の第1作『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』の公開は11年。以来、このスリリングで奥の深いシリーズを見続けてきた観客は、主人公が気高い指導者であることに気付いている。類人猿の中で最も知能が発達したチンパンジーのシーザーだ(演じるのはモーションキャプチャーでCGキャラクターになり切る役者の第一人者で、『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラム役でも有名なアンディ・サーキス)。
シーザーの献身と教育のおかげで、猿たちは仕草も交えた人間並みの会話能力や、複雑な社会組織を手に入れる。しかしシーザーは『新世紀』で賢明さとストイックさを失い、高慢さと復讐心が頭をもたげてトラブルを招く。『創世記』では猿と人間のはざまでアイデンティティーに苦悩する指導者だったが、ついにシェークスピア劇さながらの清濁併せのむ王に変身した。
新しいヒーロー像の誕生
本作でのシーザーは毛に白いものが交じる円熟した家父長だ。彼が率いるコミュニティーは人間からの脅威を受けつつも第1作からの「猿、一緒、強い」という理念の下に暮らしている。しかし人間の手先となり、人間のために働き、収容所の看守となる猿もいる。
人間の激しい攻撃によって平和な集落が大きな被害を受け、猿たちは安全な場所に移ることにする。しかしシーザーとその仲間は出発直後に集団から離れ、兵士たちを率いる残忍な人間のリーダーを追跡する。