人類の終わりを告げる鮮やかな『猿の惑星』最終章
そのリーダーとは、猿に対して常軌を逸した憎しみを抱く、大佐と呼ばれる男(ウディ・ハレルソン)。誇大妄想で不安定だが自分なりの使命感や規範を持つこの人物を、ハレルソンは迫力たっぷりに演じている。
大佐の本拠地を目指す一行に、別の猿「バッドエイプ」(スティーブ・ザーン)と、口が利けない孤児の少女ノバが加わる。ザーンは、動物園で1匹だけで長く飼育されていたため少し頭がおかしくなった猿の役を、切なくも滑稽に演じている。
かわいらしい金髪の少女ノバには、人間と猿の橋渡しをさせようとするセンチメンタルな意図を感じた(人類の寒々とした未来ばかりが描かれるなかで彼女を登場させたくなる脚本家たちの気持ちはよく分かる)。
出来栄えでいえば、『聖戦記』は素晴らしい。これまでの2作の高いレベルを維持した最終章であるだけでなく、ビジュアルも豪華でスリル満載。しかも社会や個人の心の中にある善悪や地球の未来について厳しい問いを突き付ける。
人間の歴史が終わるという決定的な瞬間の、最も複雑で忘れ難い映画のヒーローは誰だろう。スーパーマンでもなく、人類を救う(あるいは滅ぼす)ために飛来するエイリアンでもない。テクノロジーによって高い知性を得たシーザーこそ新しいヒーロー像ではないか。
シーザーは人間が地球を長きにわたって支配してきたことに疑問を投げ掛ける。地球の主人は今のところ人間かもしれないが、大自然が圧倒的な破壊力を見せつけるラストシーンに、観客は言葉を失う。
人間はあとどのくらい地球に君臨するに足る存在なのか? 観客はそう考えながら帰途に就くに違いない。
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© 2017, Slate
[2017年10月10日号掲載]