最新記事

ロシア

プーチンの危険な「綱渡り」、北朝鮮支援をひそかに加速

2017年10月10日(火)17時48分

また、北朝鮮とわずかに国境を接しているロシアは、何万人もの北朝鮮出稼ぎ労働者を帰国させようとする米主導の試みにも抵抗している。こうした出稼ぎ労働者による送金が、北朝鮮の強硬な指導部を存続させている一助となっている。

「北朝鮮は、米国が体制転換に干渉しないという確証と自信をさらに得るべきだと、ロシア政府は真剣に考えている」と、ロシア外務省に近いシンクタンク「ロシア外交問題評議会」のアンドレイ・コルトゥノフ所長はロイターに語った。

「体制転換は深刻な問題だ。クレムリンは、米国のトランプ大統領が予測不可能な人物であることを理解している。事態を急変させるような行動を取らなかったオバマ前大統領に対しては安心感を抱いていたが、トランプ氏に対しては未知数だと感じている」

金正恩氏を「ロケットマン」と揶揄(やゆ)するトランプ大統領は先月、国連総会で行った演説で、必要とあらば北朝鮮を「完全破壊」すると警告している。

戦略的国境

確かに、北朝鮮との経済的つながりは、ロシアよりも中国の方が大きく、核危機において中国はより強力な役割を果たしている。とはいえ、中国は北朝鮮のミサイル・核プログラムに対する制裁を強化しており、対朝貿易を削減している。ロシアは逆に、北朝鮮支援を増やしている。

ロシア政府を詳しく知る関係筋によると、ロシアが支援を増やす理由は、北朝鮮の体制転換を全く望んでいないからだという。

ロシアのプーチン大統領は、北朝鮮の核実験を挑発的だと非難する一方、米韓両国に対する北朝鮮の安全保障に関する懸念は理解できると、先月ウラジオストクで開催された「東方経済フォーラム」で語っている。

人口60万人を抱える極東の港湾都市ウラジオストクは、ロシアの太平洋艦隊の拠点であり、北朝鮮との国境からはわずか100キロほどしか離れていない。統一された朝鮮半島で、自国の近くに米軍部隊が配備されることにロシアは激しく反対するだろう。

「(北朝鮮は)イラクで事態がどのように展開したか知っている」と、プーチン大統領は前出のフォーラムで語った。「核兵器とミサイル技術を有することこそ、唯一の自衛手段だと分かっている。それを放棄すると思うか」と問いかけた。

北朝鮮の核保有国化は、まだ完全ではないものの、永続的であり、後戻りできない。また、西側は北朝鮮のミサイル・核プログラムの部分的凍結を期待するのが関の山だ──。これがロシアの見方だと専門家は指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訂正:旅客機が米軍ヘリと衝突、川に墜落 首都ワシン

ワールド

フィリピンGDP、第4四半期は前年比+5.2%で横

ビジネス

トヨタの24年世界販売3.7%減、過去最高の海外寄

ビジネス

JPX、山道CEOらの報酬減額 東証元社員のインサ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 3
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? 専門家たちの見解
  • 4
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 7
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    女性が愛おしげになでていたのは「白い犬」ではなく.…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中