自民、衆院選公約に教育機会均等 国立大授業料ゼロ構想も
9月20日、自民党は衆院選の公約に「教育の機会均等」を盛り込む方針だ。写真は東京大学の安田講堂、昨年7月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)
自民党は衆院選の公約に「教育の機会均等」を盛り込む方針だ。現在党内では、国公立大授業料分を一律無償化し私立大の学生にも追加的に負担軽減を図るため、「出世払い型拠出金制度」を有力案として検討中。学生の負担感が少ない上、卒業後の収入から少額ずつ源泉徴収するため政府の実質財政負担も年間数千億円程度に収まるという試算もある。同党教育再生本部は、財政膨張の回避と教育の機会均等を両立させる手法だとしている。
解散間近、公約の具体化急ぐ
自民党筋によると、10月22日投開票とみられている衆院選の選挙公約には「教育の機会均等」という文言を盛り込む方向。28日の臨時国会召集日に衆院が解散される見通しのため、内容を早急に詰めるとしている。
また、教育機会均等に回す財源の確保に関連し「8%から10%への消費増税分5兆円のうち、教育に回す分を増額することは安倍首相も承知している」(自民党筋)という。
安倍晋三首相は、11日の「人生100年時代構想会議」で、大学教育について「給付型奨学金や授業料の減免措置の拡充強化を検討する」と発言した。
財政的事情などから「一律無償化」という考え方は後退したが、大学で学ぶ意思のある学生の機会を失わせないようにするため、債務を負わせない形で授業料負担を軽くしようとの意図がうかがえる。
同党の教育再生実行本部の文科相経験者らが中心となって、授業料の減免幅拡大に向け、オーストラリアで導入済みの出世払い型拠出金のシステムを参考に検討を進めている。
この制度では、国公立大に通う学生の授業料は全額を政府で負担する。例えば、国立大の年間授業料53万円(平均)の負担額はゼロになる。
また、私大は同100万円前後(平均)だが、負担額は国立大授業料との差額47万円のうち、半額を国が負担。学生の実質負担額は23万5000円になる計算だ。
学生は卒業後、一定の年収(例えば300万円超)に達した場合、月収の一定割合ないし定額を月額給与から差し引かれ(源泉徴収)、返済していく仕組み。現在導入されている所得連動型奨学金では、毎月の返済額は最低2000円となっている。
金融機関が提供している住宅ローンのように複利で利子を取りようなことはなく、無利子を原則とし、あらかじめ返済期間を定めない。
すでに導入されているオーストラリアでの返済率を勘案し、約80%が完済されることを前提に制度設計していくという。
同本部の構想では、制度のスタート当初は一定の拠出を財政資金で用意。将来は返還を財源に充てる。