シリアで流行した皮膚が溶ける「奇病」のワクチン開発に光が!?
当時のクルド人戦士は、ハサカ県タル・ハスミはじめ、複数の戦闘地域で蔓延したリーシュマニア症を目にし、「これまで4年も(シリアで)闘ってきたが、こんな致命的な病気とは知らなかった」と語っている。
マウスを使った実験で光明
リーシュマニア症は発症した時の症状によって、出現頻度が高く感染部位に瘢痕(はんこん)を一生残す「皮膚リーシュマニア」、致死率の高い「内蔵リーシュマニア」、鼻、口、咽喉の粘膜を破壊する「粘膜性リーシュマニア」の3つに分類される。シリアで感染が拡大したのは、皮膚リーシュマニア。アメリカで発生したのは内蔵リーシュマニアだ。
DNDi(顧みられない病気のための新薬イニシアチブ)によると、リーシュマニア症による年間の死亡者数は2~3万人。一部では5万人という見方もある。アメリカでは症例数の増加が懸念され、研究者らがワクチン開発を急いでいたが、その完成に一歩前進する成果が発表された。
ジョージア工科大学の研究チームは、ACS Central Science誌に掲載された論文で、「実験用マウスは、皮膚リーシュマニアおよび内臓リーシュマニアの原因菌に対する免疫力があることを示した」と報告。Newsweek米国版サイトによると、実験では、ワクチンを打ったマウスと打っていないマウスをそれぞれ12匹用意し、リーシュマニアに感染させた。すると、ワクチン接種を受けていない12匹すべてがリーシュマニア症を発症したという。
As 'flesh-eating' Leishmania come closer, a vaccine against them does, too https://t.co/ec5k8TkIRc pic.twitter.com/Sy0251VUno
— Science (@scienmag) 2017年9月13日
(リーシュマニア予防のメカニズム)
しかし、マウスは人間ではない。人間にワクチンを使って安全で効果があることが十分に証明されるまで、どのくらいの時間がかかるかわからない。さらにお金の問題もある。研究チームは、現在確保している研究資金ではこれからの研究を進めるには足りないと嘆いている。
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