ほころび始めた中朝関係 北朝鮮は中国に恥かかす機会うかがう?
関係改善のため、習主席は、2015年10月の朝鮮労働党創建70年の記念日に行われた軍事パレードに、共産党幹部の劉雲山・政治局常務委員を派遣した。
劉氏は、正恩氏のリーダーシップを称賛する習主席からの書簡を手渡した。書簡には、中国共産党からだけでなく、習氏個人からの「心のこもった言葉」が含まれており、敬意が強くにじみ出ていた。
習氏の歩み寄りに対し、北朝鮮の行動は厚かましさを増す一方だ。北朝鮮が中国に最大の恥をかかせるタイミングをはかっていると、多くの専門家はみている。例えば、3日の核実験は中国がBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国)首脳会議を主催するタイミングであり、5月の長距離ミサイル発射実験は、習氏の外交政策の目玉であるシルクロード経済圏構想「一帯一路」の国際首脳会議の直前であった。
唇亡歯寒
中国と北朝鮮との関係について、毛沢東が「唇亡歯寒(唇ほろびて歯寒し)」と表現したことは、「口と歯ほどの緊密さ」を意味していると、よく誤解されている。
だが、この言葉は「唇がほろびてしまっては歯は寒い」と訳されるべきであり、地政学的な安全保障上の緩衝地帯として、北朝鮮の戦略的重要性について言及している。
北朝鮮による行動のせいで受ける圧力を腹立たしく思っているにもかかわらず、中国は極端な強硬策に出ることは控えている。
正恩氏の異母兄、金正男氏がマレーシアの空港で2月に殺害されたときにも、中国はほとんど何も語らなかった。正男氏は後継者争いで正恩氏のライバルと目され、北京とマカオで長い間生活していた。
中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は、北朝鮮による6回目の核実験を受けて同国への石油供給停止や中朝国境の封鎖を行っても、さらなる実験を阻止できるかどうかは分からず、中朝の対立につながり中国の国益を損ねることになると警告した。
中国がこれまでの国連制裁決議を支持してきたことを、北朝鮮はとても不愉快に思っていると、北京にあるカーネギー清華グローバル政策センターの北朝鮮専門家、Zhao Tong氏は指摘。「もし中国が北朝鮮の体制を直接不安定化させるような強硬な経済制裁を支持すれば、北朝鮮が、米国と同じくらい中国に対しても敵対的になる可能性がある」
(Philip Wen記者、Christian Shepherd記者 翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)