ドイツのメルケル政権、新たな連立枠組みでEU統合推進にブレーキか
FDPは選挙綱領で、ユーロ圏の金融安定網である欧州安定メカニズム(ESM)の段階的廃止や、加盟国のユーロ圏離脱を認めるような形にEU条約を変更することを掲げた。クリスティアン・リントナー党首は、ギリシャに対して旧通貨ドラクマへの復帰を公然と呼び掛けている。
ある緑の党の議員はロイターに「こと欧州問題では、FDPはAfDと主張にそれほど差がない部分がある。FDPの考えが全て実行されれば、ユーロ圏危機が再燃してしまう」と懸念を伝えた。
メルケル氏の新政権にとってFDP以外にも厄介な問題がある。保守与党のパートナーでバイエルン州の地域政党、キリスト教社会同盟(CSU)は、難民問題で既にメルケル氏が率いるキリスト教民主同盟(CDU)と隙間風が吹いているが、今回のAfDの躍進を受けて来年のバイエルン州議会選でさらに右傾化してしまう可能性がある。
保守与党全体としても、AfDに流れた有権者を取り戻すことは重要な課題の1つであり、おのずと移民や欧州統合に関してより強硬な姿勢で臨む形になるだろう。
低い優先度
今回の選挙前でさえ、メルケル氏に近い何人かの関係者は、ユーロ圏改革を優先度の低い政策課題と位置付け、欧州の国境管理態勢やEU各国間の公正な移民受け入れ負担を確立する方が先だと主張していた。
あるドイツ政府高官は先月ロイターに「欧州にとってユーロ圏危機よりも難民危機の再来がより破滅的だ」と話した。
一方、ベルテルスマン財団が昨年実施した調査では、欧州の政治経済統合をさらに進める必要があると考えるフランス人の割合は41%と、EU平均を10%ポイント下回っている。
この調査では、マクロン氏が提案したユーロ圏財務相と予算について最も懐疑的だったのがドイツ人とフランス人だったことも分かった。ユーロ圏の予算導入がより経済が弱い国の支援に有効とみなしたフランス人は全体の31%、ドイツ人も39%にとどまっている。
(Noah Barkin記者)
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