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元アメフト選手が見せるALS患者のリアル

2017年9月7日(木)11時30分
大橋 希(本誌記者)

『ギフト』の公開は人々の心をさらにつかんだ。「介護をする人々が、『カタルシスを感じた』『ALSの現実を見せてくれてありがとう』と言ってくれたのが何よりうれしい」とミシェル。介護者だってもがき、ありのままの自分でいていいと映画は教えてくれる。彼らも患者と同じくらい大変なのだから。

【参考記事】中国版『ランボー』は(ある意味)本家を超えた

誰もが共感できる場面も

4年間に撮った1500時間もの映像から選んだだけあって、印象的な場面は数え切れない。息子の誕生時のたまらなくうれしそうな顔。信仰をめぐって父親に抗議し、泣き崩れる姿。スカイダイビングの場面に重なる「僕の未来は過去よりも実り豊かになるだろう」という言葉。どのグリーソンも忘れ難い。

ミシェルに対して、「君には僕への思いやりがない。全てが雑だ」となじる寝室の場面にはALS患者でなくても共感し、自らの経験と重ね合わせるだろう。「かなり個人的な場面で、映画に入れるべきか本人は迷っていた。でも私は『いいところだけ見せるのは現実と違う』と主張した」とミシェル。「あの場面のおかげで、映画が素晴らしいものになったと思う」

この言葉に、多くの人は強くうなずくはずだ。

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[2017年8月29日号掲載]

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