アメリカはウクライナで「航行の自由」作戦をやるべきだ
ケルチ海峡に面するクリミアの海岸で釣りをする男性。遠くに見えるのは、ロシアとクリミアを陸路で結ぶためロシアが建設中の橋 Pavel Rebrov-REUTERS
<ロシアが、ロシア本土とクリミア半島の間のケルチ海峡を封鎖した。ウクライナに対する揺さぶり、アメリカに対する挑発だ。米艦船を派遣してケルチ海峡を通過せよ>
ロシアは8月7日、ロシア本土とクリミア半島の間のケルチ海峡を一時封鎖する、と発表した。8月と9月の間の計23日間に及ぶという。8月9日には早速、朝6時~夜6時の間、ロシア海軍の艦船以外は通行ができなくなった。
ケルチ海峡は多くの商船も行き交う国際水域。しかもクリミア半島は2014年にロシアが違法に併合したウクライナの領土だ。封鎖する権利はロシアにはない。表向きの理由はロシアとクリミア半島を陸路で結ぶためケルチ海峡に建設している橋の工事だが、その橋自体がクリミア実効支配の象徴だ。
ケルチ海峡の封鎖はウクライナに対する脅しであり、ドナルド・トランプ米大統領に対する侮辱だ。
ロシアの狙いがウクライナ経済を揺さぶることにあるのは明らかだ。ケルチ海峡は、ウクライナ東岸のアゾフ海から黒海への唯一の出口。ウクライナ産の鋼材をヨーロッパに輸出するためのマリウポリとベルディアンスクという戦略的に重要な2つの港湾都市もある。ウクライナの社会、政治、経済を自在に攻撃できる、というのがロシアの合図だろう。
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ケルチ海峡の封鎖は、アメリカに対する攻撃でもある。もしロシアがウクライナ問題についてトランプと本気で話し合いたければ、今回の行動には出なかったはずだ。
ロシアのドミトリー・メドベージェフ首相が8月3日にツイートで、トランプは米国内で屈辱的なほど弱い立場に置かれていると発言したのも、ロシア政府がトランプやトランプ政権をバカにしていることの表れだ。
ロシアの軍事力は限界
だが、ロシアが無傷でウクライナやアメリカに対抗できると考えたら大間違いだ。ロシアはクリミア併合以降続いている欧米からの経済制裁で着実に疲弊しており、国防費や重要な国内投資さえ削減せざるを得ない状況だ。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は従来と変わらず強気のふりをしているが、実際には、ウクライナを脅すにも交通の封鎖や経済戦争、サイバー攻撃、テロなど、軍事力以外の手段しか使えない。
ロシアはウクライナ周辺で軍事力を拡大し、今後もさらなる増強を試みているが、ウクライナに侵攻するための国力は、多分すでにない。
ロシア軍の兵士は総勢35万人だが、そのうち戦闘に参加できる兵士はおよそ3分の1だけ。軍事力の増強は難しくなっている。
だからこそ、ロシアはアメリカと対等の大国だと見せかけるために、アメリカに批判的な発言や見せかけだけの行動で強がるしか方法がない。
ウクライナの主権と国家としての統一性、さらには1789年以降のアメリカの外交政策の基礎となってきた航行の自由を証明するため、アメリカは米海軍の艦船をケルチ海峡に派遣し、通過させるべきだ。(中国が領有権を主張する南シナ海で米海軍が実施している航行の自由作戦と似ている)。
そしてNATOも続くべきだ。