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英王室

ダイアナ元妃の生涯と「あの事故」を振り返る

2017年8月30日(水)16時45分
ジョシュ・ロウ

メディアを巻き込み、ダイアナとイギリス王室の評判を大いに傷つけた数年にわたる騒動の果てに、皇太子とダイアナは1996年に離婚した。離婚の条件として、ダイアナは引き続きロンドンのケンジントン宮殿に住み続ける権利を獲得し、「プリンセス・オブ・ウェールズ」の称号も維持した。離婚後は、元皇太子妃という自らの知名度を生かし、人道支援や慈善活動に力を入れた。中でも名高いのが、このころ世界中で蔓延していたエイズ問題への取り組みで、当時タブーとされていたこの問題にも積極的に関わっていった。

【参考記事】【写真特集】王室を去ったダイアナが伝えたかったこと

突然の事故死

ダイアナは死の前日の8月30日、少し前から交際していたエジプト人映画プロデューサー、ドディ・アルファイドとパリを訪れていた。ドディの父は、イギリスのデパート「ハロッズ」の元オーナーである億万長者、モハメド・アルファイド。ダイアナとドディは当初、モハメドが所有するパリのリッツ・ホテルに一泊する予定だった。

しかし、2人の居場所を突き止めようとするパパラッチがホテルを取り囲んでいたため、ダイアナとドディは夕食の予定をキャンセルし、パリ市内にあるドディのアパートに向かうことにした。直前になって決まった話だったため、リッツ・ホテルの警備責任者アンリ・ポールが急きょ呼び出され、運転手を務めることになった。ポールはこの3時間前にこの日の本来の勤務予定を終えており、運転席に乗り込む前に酒を飲んでいた。

ホテルを出る際ポールは、待ち構えたメディアに対し、車には追いつけないだろうという趣旨の発言をしたと伝えられる。ポールが運転する車は猛スピードでホテルをあとにし、速度制限の2倍の速さで近くのトンネルに入った。ここでポールが運転を誤り、車はトンネルの支柱に激突。この事故でドディとポールは即死した。ダイアナは即死こそ免れたが、8月31日の早朝に死亡宣告を受けた。享年36歳だった。

イギリスがダイアナの死によって受けた衝撃は、非常に大きなものだった。一般市民は、生前ダイアナが住んでいたケンジントン宮殿に花束をたむけ、追悼の意を示した。メディアも連日、ダイアナの死についてのニュースを報じ続けた。イギリス王室は、ダイアナの死の知らせを受けた後も、夏の避暑地としていたスコットランドのバルモラル城に滞在を続け、批判の的となった。ただしこれに関しては、ウィリアムとヘンリーの両王子に、人目のない場所で母の死を悼む機会を与えようという思いに駆られた行動だったとして、年長の王族たちの判断を擁護する声もある。

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