トランプ政治集会の中で聞いた、「優しい」支持者たちの本音
鳴りやまない「トランプ!トランプ!」の大合唱に、「USA!」コール。1時間以上に及ぶスピーチで、トランプは「大統領候補」だったときのようなトランプ節を繰り広げた。メキシコ国境に壁を作ると言い、人種差別的な取り締まりで有罪判決を受けた元保安官アルパイオへの恩赦を示唆し、シャーロッツビルの衝突事件に対する自分の対応を擁護しながら、リベラルメディアはフェイクニュースばかりを流していると主張した。
トランプが語りかけるたびに、支持者たちは「CNN、最悪!」「あいつらは嘘つきだ!」と盛り上がる。その一方で、身長が低い私にトランプが見える位置まで場所を譲ってくれたりする。
今日のトランプのスピーチは、支持者から見れば「すべて真っ当」な言い分であり、支持しない人から見れば「大統領でありながら国家をますます分断するような発言」の連続だった。こうした見解の相違は、会場の外に一歩出ると体を張った対立へとエスカレートしていた。
「ラブの力でみんなを1つにできないかな」
外に出ると、トランプ支持者たちを待ち構えていた抗議者たちに囲まれた。総動員された警官や州兵が壁となってバリケードを作るなか、一触即発の状態があちこちで生まれていく。
私の目の前で、「ノーKKK、ノー人種差別のアメリカ、ノートランプ!」と合唱する若い女性たちに、トランプ支持者の白人男性が近づいていく。
「俺はKKKもナチスも支持しない。それでもトランプ支持者は全員レイシストだっていうのか?」と冷静に話をしようとする男性に対して、女性たちは「トランプを支持している限りレイシストだ!」と中指を立て、それでも話を続けようとする男性に叫び続けた。ここでは、抗議者の側が聞く耳を持たず、言葉の上では抗議者のほうが攻撃的に見える状況が繰り広げられていた。
ふと隣を見ると、この光景を見ていたメキシコ人のヘレナ・セッセーナ(21)が「どちらの側も、同じくらい熱心なだけなのに」と悲しそうな目をしていた。「政治上の意見の相違なんて、小さなこと。ヒッピーみたいな考えかもしれないけど、ラブの力でみんなを1つにできないかな」
おそらくもう、「小さなこと」にできる地点はどちらの側も通り過ぎてしまったのだろう。帰り道、すれ違う人々にハイタッチを求めていたトランプ支持者の男性はこう言った。「ラブのサインを掲げている人たちは、俺とは握手しないぜ」
ホテルに戻ってCNNをつけると、キャスターと保守派のコメンテーターが集会への感想として真逆の見解を怒鳴り合って収拾がつかなくなっていた。しばらくすると、テレビの画面はコンベンションセンター前で抗議者と警察が対立し、警察側が催涙弾を使う様子を伝え始めた。外の気温は夜10時の時点で35度。アメリカを蝕む熱風は、しばらく冷めやりそうにない。
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