さまようウイグル人の悲劇
東南アジアを経由してトルコに着の身着のままやって来たウイグル人亡命者は、既に3万人を軽く突破していると言われているが、彼らは皆、中国出発の時点で多少の資金を持っていた。自宅の取りつぶしに遭った際の立ち退き料を新しい住まいの購入資金とするのではなく、国外脱出の費用にしていたのである。
ウイグル人居住区の取りつぶしは、コミュニティーや人間関係の破壊にとどまらず、人々の信頼と相互扶助をも喪失させた。さらに中国共産党はここ数カ月のうちに、国外亡命をこれ以上させないようウイグル人のパスポートを没収し、彼らが所持する携帯電話やパソコンにスパイウエアをインストール。「怪しい動き」をしないよう、個々を見張る監視システムを新疆全域で着々と構築しつつある。
いま新疆では、この地を専門とする外国人学者が現地に入ってフィールドワークすることさえ不可能な状況が続いている。尾行や盗聴が行われ、調査対象と話をしたら、公安当局者が後で相手に状況を聞きに現れる。
【参考記事】中国の「テロとの戦い」は国際社会の支持を得るか
「一帯一路」政策の陰で経済発展の恩恵を受けることができず、文化大革命期の「黒五類(右派や地主、反革命分子などとレッテルを貼られた者)」と同様に、社会からの排除対象者として扱われるウイグル人。
中国の言う「恐怖分子(テロリスト)」は、こうした差別と排除が生み出している。さまよえるウイグル人の安住の地は、故郷にも国外にもない。
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[2017年8月15日号掲載]