最新記事

韓国政治

朴槿恵が当選した韓国大統領選挙には情報機関が介入していた

2017年8月7日(月)16時52分
ジェシー・チェース・ルービッツ

2012年12月、韓国大統領選挙に当選した直後の朴槿恵 Kim Jae-Hwan-REUTERS

<2012年の大統領選で左派・文在寅に朴槿恵が勝てたのは世論操作のおかげだった?>

文在寅(ムン・ジェイン)が朴槿恵(パク・クネ)に敗れた2012年の韓国大統領選挙で、韓国の情報機関である国家情報院(国情院、NIS)が朴を当選させるべく選挙に介入していた。国情院の不正を明らかにするため文政権が設置した作業部会が確認した。

作業部会の調査報告書によると、国情院は、インターネットの専門家やソーシャルメディアを使い、保守候補の朴が有利になるよう世論を誘導した。

具体的には、少なくとも計30人の職員とインターネットに詳しい民間人が、2012年の大統領選の2年前からソーシャルメディアに保守派支持の投稿をしていた。なかには左派候補の文在寅を「北朝鮮のスパイ」呼ばわりする投稿もあった。文は長年、北朝鮮に対する融和路線を主張していたからだ。

【参考記事】韓国人が「嫌いな国」、中国が日本を抜いて第2位に浮上

「選挙介入に関わったチームは、政府寄りの意見を広め、反政府の言論を封じようとした容疑で告発されている」と、英ガーディアンは報告書を引用している。

国情院は既に2013年に、ネット上に数千の政治的なコメントを投稿した職員を特定している。今回の調査でそれが、考えられていたより大規模な行為だったことが明らかになった。

【参考記事】日本の未来を予見させる、韓国高齢者の深刻な貧困問題

当時の国情院トップだった元世勲(ウォン・セフン)は既に公職選挙法違反などの罪を問われて公判中で、最長4年の実刑判決を受ける可能性もある。

与野党共に調査結果を非難

報告書によれば、朴の前任者、李明博(イ・ミョンバク)大統領(当時)の下でも、同様の選挙介入が行われてた。李と朴はいずれも同じ保守政党に属し、共に汚職スキャンダルに見舞われ、北朝鮮に対する強硬姿勢も共通している。

朴は2012年の大統領選で文に辛勝し、韓国で初の女性大統領になったが、今は収賄や職権乱用などの容疑で裁判が行われており、終身刑になる可能性もある。朴の人気は昨年、旧友の崔順実(チェ・スンシル)の財団への出資を企業に強要していたことが明らかになると急落し、弾劾訴追・罷免された。

【参考記事】歴代大統領の不正と異なる「朴槿恵逮捕」の意味

今年5月の大統領選では、文在寅が地滑り的大勝を収め、国情院による選挙介入を阻止すると誓った。

今回の調査結果について、進歩(革新)系与党「共に民主党」は「許しがたい行為」と非難し、保守系最大野党の「自由韓国党」は「何らかの政治的な意図」によるものと否定した。

From Foreign Policy Magazine



【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!

ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権

ビジネス

シタデル創業者グリフィン氏、少数株売却に前向き I

ワールド

米SEC委員長が来年1月に退任へ 功績評価の一方で

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦争を警告 米が緊張激化と非難
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中