アップル、販売回復へ中国で賭け 個人情報の検閲で「服従」か?
秋波
しかし、こうした戦略にはリスクも付きまとう。
中国はオンラインメディアやストリーミングなど「サイバースペース」の規制を強化しており、6月1日に導入した新法では、企業がユーザーのデータを中国国内に蓄積するよう促している。
この規制について、海外企業の間では曖昧過ぎるとの懸念が強いが、アップルは即座に新法に従い、データセンターの設置を発表した。
DCCIインターネット・リサーチ・インスティテュートのリュー・シンリアン所長は「データセンターの設立とVPNアプリの配信停止により、アップルは中国政府に秋波を送っている」と語る。
一部には、アップルが昨年、銃乱射事件に絡んで米連邦捜査局(FBI)からアイフォーンのロック解除を求められて拒否したことと、中国政府への姿勢は矛盾する、との指摘もある。
クックCEOは1日、この問題について「意見が異なる場合でも政府と対話していく」姿勢を明示。「米国のケースでは米国法が当社を支持していた。これは極めて明確だ。中国の場合には中国に明確な法律がある」とし、「2つのケースは大きく異なる」と話した。
「だからと言って、適切な方法でわれわれの見解を述べないというわけではない」とも述べた。
とはいえ、中国の検閲に従うような動きは国外で批判を呼ぶ可能性があり、アップルが賭けに出たのは明らか。ただ、中国の消費者は意に介さないでいてくれそうだ。
アイフォーンを使い続けてきたという27歳の女性は「アップルが中国政府と仲良くしようとするのは普通のこと。次世代(アイフォーン)が出れば買うわ。いつもそうしてきたから」と語った。VPNアプリはあまり使わないので、配信停止によって購入判断を変えることはないとも付け加えた。
(Adam Jourdan記者 Pei Li記者)
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