最新記事

ISIS

「ゴースト」「ドイツの椅子」......ISISが好んだ7種の拷問

2017年8月16日(水)19時00分
ジャック・ムーア

シリア北部のトルコ国境の町アザーズ、ISISが敗走した後の拠点(2014) Hamid Khatib-REUTERS

<残酷な人質殺害法で世界を恐怖に陥れたISISは、「自国」の刑務所ではさらに残虐の限りを尽くしていた>

ISIS(自称イスラム国)が支配する刑務所で使われていた拷問手法をまとめた報告書が発表された。一時はイラクとシリアの大きな部分を支配していたISISの悪行と、残酷極まりない尋問・監禁方法が明らかになった。

トルコ警察の対テロ作戦部局の元局長であるアフメト・ヤイラなどの専門家が作成し、アメリカの暴力的過激主義国際研究センター(ICSVE)が発表した報告書は、ISISが人質や収容者をいかにして肉体的・心理的に追い詰めたかを詳述している。

ISISの刑務所は、宗教警察、ヒスバ(道徳警察)、エムニ(治安部隊)、軍事警察など様々な部署が合同で管理している。報告書によれば、人質が受ける肉体的な拷問は7種類ある──鞭打ち、火炙り、「空飛ぶ絨毯」、「ゴースト(幽霊)」、「ドイツの椅子」、「バイター」、タイヤだ。

【参考記事】米軍に解放されたISの人質が味わった地獄

特製の金属椅子


■「ゴースト」
 人質を後ろ手にして手錠をかけ、その手錠を天井やドアに掛けてぶら下がった身体を鞭で打つ。ホースの水や電気棒を使うこともある。人質はそのまま何日も放置され、肩関節が外れたり一生腕が動かなくなることもある。

■「ドイツの椅子」とは、背もたれを後ろに引くことのできる金属製の特製の椅子のこと。収容者の手足をこの椅子に縛り付け、背もたれを勢いよく後ろに引くと、手足と首に激痛が走る。ほとんどの場合に障害が残るほどの衝撃だ。その上で、鞭打ちを施したり、ゴーストの応用で逆さまに吊るし、放置した。

■タイヤ
 その名の通り大きなタイヤを使う拷問だ。収容者をタイヤのなかに押し込み、不自然な格好のまま動けなくしてから、鞭打つ。

【参考記事】ISIS戦闘員を虐殺する「死の天使」

■火炙り ISISと戦う自由シリア軍(FSA)の戦闘員と疑われた33歳のシリア人男性は、ISISのチュニジア人取調官に、火をつけられた時の状況を詳しく語った。「取調官は燃料タンクを持ってきて、私の体の胸から下に油をかけた。白状しなければお前を燃やすと言われた」「私はそれを単なる脅しだと思った。本当にやるとは分からなかった。次に覚えているのは、病院で目を覚ましたことだ」。男性は生殖器に重度の火傷を負った。

■「空飛ぶ絨毯」とは、蝶番でつないだ2枚の板の上に人質の体を縛りつけた上で板を開閉する拷問だ。「無理やり身体を2つに折り曲げられると、背骨に一生治らない重症を負う」と報告書は指摘する。板に張り付けた人質を鞭打ち、感電死させることもあった。

【参考記事】北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中