アルカイダとISISの近くて遠すぎる関係
その2年前には、ISISの前身であるアルカイダ系スンニ派武装組織のISI(イラク・イスラム国)が、厳格なカリフ制のイスラム国家樹立を宣言した。アルカイダに聡明な長期戦略があるとは思えない。
さらに、アルカイダ自身のテロ遂行能力は明らかに低下している。ザワヒリは頻繁に声明を出し、欧米諸国への攻撃が最優先の使命だと宣言している。しかし、アルカイダが最後に欧米を攻撃したのは何年も前のこと。イギリスなどで相次いだ大規模なテロを見ても、手負いのISISのほうが、今もはるかに遂行能力は高い。
続いて、ジハードを掲げる2つのテロ組織が違いを乗り越えて手を組むことは、アルカイダの勝利宣言以上に実現が難しい。ISISとアルカイダの間に渦巻く憎悪は相当なものだ。
【参考記事】ポストISIS戦略に残る不安
アルカイダの忠実な信奉者は、ISISのゲリラ兵を「過激主義」「ハワーリジュ派(離脱者)」「タクフィール(背信者)」と罵倒する。対するISISは、アルカイダのメンバーを「ジハードのユダヤ人」、異端のタリバンを率いる「スーフィー派(イスラム神秘主義)」とさげすむ。
両者の亀裂に橋を架けることは不可能だ。つい最近のいがみ合いに思えるかもしれないが、ジハードをめぐる神学的および戦略的な違いに根差す数十年来の対立なのだ。
ISIの時代から10年以上、組織を変え名前を変えてきたISISは、末期的な状態とはいえ、ほぼ確実に生き延びるだろう。アルカイダとISIS――どちらかが相手を吸収して一つになることも、敵対しつつ連携を探ることも、まずなさそうだ。
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[2017年8月 1日号掲載]