中国、シンガポールに圧力 南シナ海問題でASEANの軟化狙う
昨年11月には、中国とシンガポールの緊張関係が表面化する事件が起こった。香港港湾当局が、演習地である台湾から本国に返送途中のシンガポール軍の装甲車9両を押収したのである。シンガポール、中国双方の国内で関係悪化をめぐって珍しく公然たる議論が行われる中、香港側は今年に入ってから押収した装甲車を返還した。
中国の国営有力紙「環球時報」は今年6月、中国・シンガポール間のかつての「特別の関係」が、南シナ海問題をめぐる不信感のせいで悪化していると報じている。
シンガポール経営大学法学部のユージン・タン准教授は、シンガポールがASEAN議長国に就任すれば、両国間で見解の対立がでてくるだろうと指摘する。
そうなれば、「中国が、対ASEAN関係において自分の主張を押しつけづらくなる可能性がある」とタン氏は話す。タン氏は、シンガポールの元外交官で、大統領指名の国会議員も務めた経験がある。
「シンガポールは、主権をめぐってどのような行動をとるべきか他国に指示する立場にはないが、ASEAN議長国としての立場で、中国に対して断固とした姿勢をとることは十分に考えられる」とも話す。
シンガポールのリー・シェンロン首相は、南シナ海での国際ルール遵守の重要性を強調している。一方の中国は、中国の領有権主張に「法的根拠なし」としたオランダ・ハーグの国際仲裁裁判所による裁定を拒絶している。
香港在住で、中国の安全保障を専門とするZhang Baohui氏によれば、中国は、「米国と中国のどちらかを選ぶ考えはない」とするシンガポールの姿勢が本物かどうか、疑っているという。
「中国政府内では、シンガポールが対中封じ込め戦略を煽っており、しかもASEAN諸国だけでなく、米国の同盟国である日本、インド、オーストラリアによる中国包囲網を望んでいる、という見方がある」と、Baohui氏は指摘した。
[香港 8日 ロイター]