中国、シンガポールに圧力 南シナ海問題でASEANの軟化狙う
南シナ海の紛争水域について、シンガポールは領有権を主張していない。だた、東南アジア最大の港湾を擁し、開放的な同国の経済を維持するには南シナ海での航行の自由の確保が前提だという立場は明らかにしている。
中国は、南シナ海のほぼ全域の領有権を主張している。この海域は、世界で最も往来が頻繁な海上交易路の1つであり、貴重な原油や天然ガス資源もある。台湾とASEANの4ヶ国(フィリピン、ベトナム、ブルネイ、マレーシア)が主張する領有権は、重複している。
米国は、南シナ海の領有権問題に対して特定の立場をとらないとしつつ、同海域の航行の自由は堅持する姿勢だ。
関係の回復
中国の王毅外相は、6日にマニラでシンガポールのバラクリシュナン外相と会談し、最近になって両国関係が改善してきたと述べた。
中国外務省によると、王毅外相は、「中国とシンガポールの関係には浮き沈みがあるが、最近は両国首脳の緊密な意思疎通を通じて相互信頼が高まってきている。これは、中国とシンガポールの健全な関係にとって非常に重要だ」と語ったという。
また、王毅外相との会談が友好ムードで進んだというバラクリシュナン外相のコメントを、シンガポールのメディアが報じている。
中国側が懸念しているのは、シンガポールが、長年にわたり米国とその同盟国と防衛協力関係を維持していることだ。ただシンガポールは、中国とも同じように友好的であるとしている。
中国はシンガポールにとって最大の貿易相手国であり、中国向け投資額ではシンガポールが首位となっている。
米国とシンガポールは2015年末に防衛協力関係の強化に合意し、その内容にはシンガポールを拠点とする米軍P-8長距離哨戒機の配備が含まれている。この機種は、中国潜水艦の追尾を担当することが多い。
また、シンガポールは、中国が自国の一部とみなしている台湾とも一定の関係を保っている。