最新記事

北朝鮮

中国:北朝鮮ミサイル抑制は中朝軍事同盟の脅威

2017年8月27日(日)14時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国の威嚇には弱い北朝鮮の金正恩委員長  KCNA/REUTERS

8月26日の北朝鮮のミサイル発射が抑制的であったのは、中朝軍事同盟に関する威嚇が未だ有効であるからだと中国は見ている。その証拠に25日、中国商務部は新たな北朝鮮制裁を発布。中国の威嚇範囲内で北朝鮮は動いている。

中国商務部の新たな制裁発布――【公告2017年第47号】

中国の商務部(部:中央行政省庁。日本の「省」)は8月25日、中華人民共和国商務部【公告2017年第47号】なる新たな対北朝鮮制裁を発布した。

その内容は「北朝鮮の実体企業(有限公司)あるいは個人が中国に来て中外合資経営企業や、中外合作経営企業あるいは外資企業を新設することを禁止する。また既に設立されている企業が資本規模を拡大することを禁止する」というものだ。

また【商務部令2014年第3号】の「国外投資管理方法」に従い、違反した申請は、いっさい許可してはならないとしている。

これは国連安保理第2371号決議の第12条を実行するためのものではあるが、しかし北朝鮮が3発の短距離ミサイルらしきものを発射する前日であったことは、注目に値する。

8月10日の「中朝軍事同盟」カードが効いている

くり返しになるが、8月25日付けのコラム 「習近平、苦々しい思い:米韓合同軍事演習」や8月15日付のコラム「北の譲歩は中国の中朝軍事同盟に関する威嚇が原因」などで書いたように、8月10日、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は社説として以下の警告を米朝両国に対して表明した。

(1)北朝鮮に対する警告:もし北朝鮮がアメリカ領を先制攻撃し、アメリカが報復として北朝鮮を武力攻撃した場合、中国は中立を保つ。(筆者注:中朝軍事同盟は無視する。) 

(2)アメリカに対する警告:もしアメリカが米韓同盟の下、北朝鮮を先制攻撃すれば、中国は絶対にそれを阻止する。中国は決してその結果描かれる「政治的版図」を座視しない。

(3)中国は朝鮮半島の核化には絶対に反対するが、しかし朝鮮半島で戦争が起きることにも同時に反対する。(米韓、朝)どちら側の武力的挑戦にも反対する。この立場において、中国はロシアとの協力を強化する。

この中の(1)と(3)は、北朝鮮にとっては存亡の危機に関わる脅威である。もし北朝鮮がグアムなどのアメリカ領を先制攻撃してアメリカから報復攻撃を受けた場合、中国は北朝鮮側に立たないということであり、その際、ロシアもまた中国と同じ立場を取るということを意味する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ローマ教皇フランシスコが死去、バチカン発表

ワールド

公明代表の訪中、意思疎通強化につながること強く期待

ワールド

インドネシア、3月貿易黒字は4カ月ぶり高水準 輸出

ビジネス

米多国籍企業、為替ヘッジ長期化 背景にトランプ政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 3
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投稿した写真が「嫌な予感しかしない」と話題
  • 4
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 5
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 6
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 7
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ペー…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 10
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 9
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中