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中央アジア

旧ソ連圏でロシア文字が衰退 若者のSNS人気が致命傷?

2017年7月31日(月)10時58分
楊海英(本誌コラムニスト)

バラーディンはソ連から「大モンゴル主義者」として批判され、長期にわたる暴力を受けた揚げ句、37年に拘束。大モンゴル主義を裏から操る「日本のスパイ」と因縁を付けられて処刑された。日露戦争に勝利した近代日本への恐怖と、13世紀のモンゴル帝国への恐怖とがソ連の政策に影響を与えていたようだ。

こうしたソ連の負の歴史を乗り越えて、ロシア文字表記の廃止を決定したカザフ政府に対し、ロシア側は早速「ロシア系住民への圧力」と反発。カザフ人口の約2割を占めるロシア人がロシアに移住を余儀なくされると懸念を示した。これに対しナザルバエフ政権は、国語のカザフ語と共にロシア語も公用語として使用できるという従来の方針に変化はないと応じた。

【参考記事】トルコとロシアの新たな蜜月

旧ソ連圏諸国の街はロシア文字の看板だらけでローマ字の余地がない、ということなら、ロシアは帝国復活の淡い希望を抱けるかもしれない。しかしロシア文字にとって致命的なのは、ソーシャルメディアに慣れ親しむ若者に不人気なことだ。かつて「大モンゴル主義」を封殺するほど猛威を振るったロシア文字は、今や確実にローカル化している。

ユーラシアにトルコ系諸民族の大家族を再び、という壮大な理想を阻止する力はもはやないだろう。

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[2017年8月 1日号掲載]

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