アメリカの太陽発電ブーム、「トランプ関税」で終焉迎える?
こうして、最悪の事態に向けた準備に追われる太陽光発電産業のパニック的な需要により、ソーラーパネルのスポット価格は、ここ数週間で最大2割も上昇した。新たな関税導入を恐れた設置業者らが、パネルの確保を急いでいるためだ。
慎重な国内エネルギー利用者は、太陽光プロジェクトを一部保留しており、メーカーは他の市場開拓も視野に置いている。投資家の一部も安全な資金待避先を探している状態だ。
米国における太陽光発電の大規模プロジェクトに対する第2・四半期の投資額は14億ドルを記録。第1・四半期の32億ドル、前年同期の17億ドルから低下しており、これはサニバの提訴を巡る懸念を反映したものだ、とマーコム・キャピタル・グループの調査は示している。
特に影響を受けやすいのは、電力事業者や大企業向けにサービスを提供するソーラーファーム(大規模太陽光発電所)の開発事業者だ。彼らのプロジェクトのコストの半分はソーラーパネル費用が占めている。
パネル価格の急騰は「大規模ソーラー事業者にとって大惨事になりかねない」と太陽光パネル製造大手サンパワーのトム・ワーナー最高経営責任者(CEO)は懸念を隠さない。
「開発事業者は危機感を抱き、対応策を練っている」と同CEOは語る。カリフォルニア州サンノゼに本拠を置くサンパワーは、仏石油大手のトタルが株式の過半数を保有している。
一般家庭向けにサービスを提供する太陽光発電事業者も、同じく神経を尖らせている。パネル価格が急騰すれば、住宅用パネル設置も、それに伴うすべての雇用も減速しかねないからだ。
トランプ大統領が外国メーカーを罰するために動けば、自身が守ると公約した国内ブルーカラー労働者に打撃を与えかねない、とサンフランシスコに本拠を置くサンランのエド・フェンスター会長は指摘する。太陽光発電産業の雇用は、トランプ氏が擁護してきた炭鉱産業の雇用の5倍以上にも達している。
「ソーラーパネルに対する課税は、この国が最も必要としている、給与水準の高い雇用を台無しにしてしまう。そうした雇用は輸出することも自動化することもできない」とフェンスター会長は語る。